二十五話:正夢
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そのことに驚いて見上げると、少し怒ったようなぐだ男の顔が瞳に映るのだった。
「無理やりだなんて……お姉様が魅力的すぎるのが悪いんです」
『それはわかるけど、怯えちゃってるよ』
「な!? べ、別に怯えてなんてないわよ!!」
震えていたのがばれて必死に否定するが彼女の言葉は聞き入れられない。
ただ、子供をあやすようにポンポンと背中を叩かれるだけである。
そのことがさらに彼女の羞恥心を煽り、涙がにじみ出てくる。
『ああ、もう……可愛い顔が台無しだよ』
「か、可愛いとか言うな!」
『ほら、涙拭いて』
普段のぐだ男とは思えないような、キザな動きで涙を拭きとられる。
具体的には指で拭うというものだ。
ジャンヌ・オルタはますます、恥ずかしくなり顔を赤くしてうつむく。
『顔が赤いよ、熱でもあるの?』
「べ、別にそんななんじゃ―――」
そこまで言って、彼女の思考は完全に停止する。
少し近づければ、唇が触れ合うほどの距離にある彼の顔。まつ毛の長さまで分かってしまう。
額をつけて熱を測るぐだ男に文句すら言えない。
まるで夢でも見ているようだ。
『熱があるね。保健室に行こう』
「熱なんてないわ―――キャッ!?」
抵抗を試みたところで、お姫様抱っこをされて可愛らしい悲鳴を上げる。
その時点で、彼女の許容量は限界を超えていた。
あー、うー、と言葉にならない声を上げて、恥ずかし気にぐだ男の胸に顔をうずめる。
その間にも彼は人目も気にせずに保健室に向かっていく。
『そんなことして、何がしたいの?』
「うぅ…こっちが聞きたいわよ。あんたこそ……私をどうしたいのよ」
『……聞きたい?』
保健室に到着し、彼女をベッドに寝かせ、ぐだ男は甘く低い声を出す。
部屋には他に人はおらず、二人きりの状況である。
『俺だって、男なんだよ?』
「ま、まって、あんた何する気…?」
ギシリと、ベッドが軋む音が響く。
彼女の上に覆いかぶさるようにぐだ男が乗ってきた音だ。
彼は狂おしさを込めた息を吐きだしながら、紅潮した彼女の頬を優しく撫でる。
『ジャンヌ・オルタ。俺は……君のことが―――』
「お姉様、起きてください。もう休み時間ですよ」
「ゆ、夢だったのね」
ジャンヌ・オルタが目を開けると、そこは見慣れた教室であった。
どうやら、寝不足の影響で一時間目から居眠りをしていたらしい。
「顔が赤いですが、大丈夫でしょうか?」
「ッ! 少し離れなさい!」
先程の夢の内容を思い出して、顔を赤くするジャンヌ・オルタ。
その様子に心配をして、手を伸ばしてくるブリュンヒルデだったが警戒から避けられてしま
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