EPISODE05勇者W
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自問に答えてあげる事だ。
「リサは少なくともキミを信用しているし、どう見たって自分の意思で働いている。自分
で足りないと思ったら、少しずつ補っていけばいいんじゃないか?」
「……本当にそう思うのか?」
「何?」
「本当にリサは……自分の意思で俺のもとで働いているのか?」
「ルーク?」
「どう見てもそうじゃないか」
「……そうだといいな」
ルークは顔をそむけた。凱は顔をそむけない。
「リサをどうしたいんだ?」「護る」
「ま……もる?」
「あいつを護る為なら何にでも耐えられる。俺は何にでも――耐えられる!」
ルークの表情は変わらない。でも、彼の感情を代弁するかのように、右の拳が強く握られているのを凱は見逃さす、彼のうちに秘めた意思の強さを窺がわせた。
(ルークはもしかして、リサが工房で働くことをよくないと思っている?)
リサを護りたいからこそ、幸せにしたからこそ、そうした矛盾が彼自身の「リサにとっての」を躊躇させる。
そして「耐えられる」とはどういうことだ?
凱はあえて追求しようとせず、疑問を抱いたまま口を紡ぐしかなかった。
「今日はいつになく饒舌だな。ルーク」
「何?」
凱の以外な指摘に、ルークは感づいた返事をする。思われてもみなかったことに対する表情の変化だった。
「ほら、ルークって普段あまり必要以上にしゃべらない印象が強いからさ」
「何言ってんだ?ガイ」
「ん?」
「俺はもともとよく喋るほうだ」
予想外の返事に、凱はあっけなく言葉を失った。
「そういやルークは魔剣について何か知っているのか?」
「魔剣?どうして俺に聞く?」
ルークの喰い付き具合を把握した凱は、一気に彼の関心を釣り上げる!
「アリアが魔剣に変化するときのキミの雰囲気が変わったから……なんとなく気になって
さ。魔剣について何かしっているのかと思って」
「探しているんだ。―神を殺せる剣……神剣―を」
ルークは唐突に答えた。凱は思わず固唾を呑んだ。
ざわりと囃し立てる空気だ。アリアが剣に変化するときに唱えたあの呪文「神を殺せ」を聞いた時と同じ空気だ。
あたりの空気が殺気に染まる。
「神……剣?」
凱はその剣の名を繰り返すように呟いた。
「でも、アリアは魔剣……」「多分あの女は魔剣じゃない。悪魔だ」「え?」
「どういう事だ?魔剣じゃないとしたら彼女は」「それは……」
「ただいまです。ルーク」
リサが帰ってきた。
(アリアが魔剣じゃなくて悪魔?)
凱が魔剣について知るのはもう少し先になりそうである。
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