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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
S級食材
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んだ、と。高性能に関係なくアイテムならどんな物でもそれなりに安く売るということだ。それが馴染みである理由の1つであるのかもしれない。

店の奥へと足を踏み入れ、エギルの背後に立つ。

「エギル」

背後から名前を呼ぶと、禿頭(とくとう)の巨漢は振り向きざま、ニンマリと笑った。

「よぉ、ネザーか。また冷やかしにきたのか」

「俺がいつ冷やかした?」

「前に来た時は、店のアイテムの値段を訊くだけで一切買わなかったじゃねぇか」

「……ああ、そういえばそうだった」

俺も今の言葉を聞くまで、その出来事をすっかり忘れてた。

以前この店に来た時、転移結晶や回復・解毒ポーションといった必須(ひっす)アイテムの値段を問いただしたことがある。その頃はまだエギルの店に対する信憑性があまりなかった。正直、安く仕入れて安く提供するというモットーにも疑いを抱いていた。だが今では疑いを捨て、馴染みのある店としてよく立ち寄るようにしている。

俺は早速、例のアイテムを売却するためトレードウィンドウを開いた。

「こいつを売却したいんだが」

「ネザーはお得意様だしな、あくどい真似はしませんよっ、と……」

いいながらエギルは猪首(いくび)を伸ばし、俺の提示したトレードウィンドウを覗き込んだ。

SAOプレイヤーの仮想体(アバター)は、ナーブギアのスキャン機能と初期の体型キャリブレーションによって現実の姿を精緻(せいち)に再現しているわけだが、鏡や窓ガラスに移る自分の顔を見るたびに、よくもまあ顔の傷跡まで再現されたものだ、と感じている。

エギルの分厚くせり出した眉稜(びりょう)の下の両眼が、トレードウィンドウを見た途端驚きに丸くなった。

「おいおい、S級のレアアイテムじゃねえか。《ラグー・ラビットの肉》か、俺も現物を見るのは初めてだぜ……。ネザー、おめえ別に金には困ってねぇんだろ?自分で食おうとは思わなかったのか?」

「思ったさ。だが俺は料理スキルをそんなに上げてない。調理しても焦がすのがオチだ。売って金にするほうがまだ得がある」

「確かにな。そんじゃ、売却でいいんだな」

「ああ、それで頼……」

その時、背後から聞き覚えのある声がした。

「ならその肉、俺に売ってくれないか」

少年の声。俺に声をかけてくる男性プレイヤーは多くない。と言うよりこの状況では1人しか考えられない。俺は相手の顔を見る前から察し、振り向く。

「買ってどうする?お前だって料理スキル上げてないだろ」

黒髪に、同じく黒い簡素なシャツとズボン、ブーツ。背中の片手剣1つきりを武装した少年剣士《キリト》。

SAOの中で唯一、俺に語りかけてくれる数少ない知り合い。しかし、だからといって友達というわけではな
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