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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
S級食材
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中央広場から西に伸びた目抜き通りを、人混みを()いながら数分歩くとすぐにその店があった。5人も入ればいっぱいになってしまうような店内には、プレイヤーの経営するショップ特有の混沌っぷりも(かも)し出した陳列(ちんれつ)棚が並び、武器から道具類、食材までがぎっしり詰め込まれてる。

店の主人と言えば、今まさに店頭で商談の真っ最中だった。

アイテムの売却方法は大まかに言って2種類ある。1つはNPC、つまりシステムが操作するキャラクターに売却する方法で、詐欺の危険がないかわりに買い取り値は基本的に一定となる。通貨(コル)のインフレを防ぐために、その値付けは実際の市場価値よりも低目に設定されている。

もう1つがプレイヤー同士の取引だ。こちらは商談次第ではかなりの高値で売れることも多いが、買い手を見つけるのに結構な苦労をするし、やれ払いすぎただの気が変わっただのと言い出すプレイヤーとのトラブルもないとは言えない。そこで、故買(こばい)を専門にしている商人プレイヤーの出番となるわけだ。

もっとも、商人クラスのプレイヤーの存在意義はそれだけではない。

職人クラスもそうだが、彼らはスキルスロットの半分以上を非戦闘系スキルに占領されてしまう。しかし、だからと言ってフィールドに出なくていいわけではない。商人なら商品を、職人なら素材を入手するためにモンスターと戦う必要があり、そして当然ながら戦闘では純粋な剣士クラスよりも苦労を強いられる。敵を蹴散らす爽快感(そうかいかん)など味わうべくもない。

つまり彼らのアイデンティティは、ゲームクリアのために最前線に(おもむ)く剣士の手助けをしよう、という崇高なる動機に求められる。

今俺の視線の先にいる商人プレイヤーは、自己犠牲などという単語とは遥かに縁遠いキャラクターに思える。

「よし決まった!《ダスクリザードの革》20枚で500コル!」

馴染みにしている雑貨屋の《エギル》は、ごつい右腕を振り回すと、商談相手の気の弱そうな槍使いの肩をバンバンと叩いた。そのままトレードウィンドウを出し、有無を言わせぬ勢いで自分側のトレード欄に金額を入力する。

相手はまだ多少悩むような素振りを見せていたが、歴戦の戦士と見紛(みまが)うほどのエギルの凶顔に人睨みされると、実際エギルは商人であると同時に一流の斧戦士でもある。相手は慌てて自分のアイテムウィンドウから(ブツ)をトレード欄に移動させ、OKボタンを押した。

「毎度!また頼むよ兄ちゃん!」

最後に槍使いの背中をバシンと1回どやすと、エギルは豪快(ごうかい)に笑った。ダスクリザードの革は高性能な防具の素材となる。どう考えても500は安いと思う。

だが、エギルは以前こう言った。

安く仕入れて安く提供するのがウチのモットーな
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