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Sword Art Rider-Awakening Clock Up
S級食材
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い。

だが、そこまでして食べようとは思わない。わざわざ頼むのも面倒だし、そろそろ集めたアイテムを売却する時期でもあるので、俺はラグー・ラビットも他のアイテム同様に売却することに決め、立ち上がった。

未練に近い感情を振り切るようにステータス画面を閉じ、周囲を再び《索敵スキル》で探る。よもやこんな最前線、言い換えれば辺境に盗賊プレイヤーが出没するとも思わないが、Sランクのレアアイテムを持っているとなればいくら用心してもしすぎということはない。

索敵スキルで周囲の安全を確認した後、青く結晶を握って言った。

「転移、アルゲード」

沢山の鈴を鳴らすような美しい音色と共に、手の中で結晶がはかなく砕け散った。同時に俺の体は青い光に包まれ、周囲の森の風景が溶け崩れるように消滅していく。光が一際(ひときわ)眩しく輝き、消え去った時には、転移が完了していた。先刻までの葉擦(はず)れのざわめきに代わって、甲高い鍛冶の槌音(つちおと)と賑やかな喧騒(けんそう)耳朶(じだ)を打つ。





彼が出現したのは、第50層《アルゲード》の中央にある転移門だった。

円形の広場の真ん中に、高さ5メートルはあろうかという巨大な金属製のゲートがそびえ立っている。ゲート内部の空間は蜃気楼(しんきろう)のように揺らいでおり、他の街に転移する者、あるいはどこからか転移してきた者達がひっきりなしに出現と消滅を繰り返している。

広場からは四方に大きな街路が伸び、全ての道の両脇には無数の小さな店が(ひし)めき合っていた。今日の冒険を終えてひと時の(いこ)いを求めるプレイヤー達が、食い物の屋台や酒場の店先で会話に花を咲かせてる。

アルゲードの街は簡潔(かんけつ)に表現すれば、《猥雑(わいざつ)》の一言に尽きる。

《はじまりの街》にあるような巨大な施設を1つとして存在せず、広大な面積いっぱいに無数の隘路(あいろ)が重層的に張り巡らされて、何を売るとも知れぬ妖しげな工房や、二度と出てこられないのではと思わせる宿屋などが(のき)を連ねている。

実際、アルゲードの裏通りに迷い込んで、数日出てこられなかったプレイヤーの話も枚拳に(いとま)がないほどだ。俺もここに(ねぐら)を構えて1年近くが経つ。NPCの住人達にしても、クラスも定かでないような連中ばかりで、最近ではここをホームにしているプレイヤーも一癖(ひとくせ)二癖(ふたくせ)ある奴らばかりになってきたような気さえする。

だが俺はこの街の雰囲気が気に入っていた。路地裏の奥の奥にある行きつけの店にしけこんで、妙な匂いのする茶を(すす)っている時だけが1日で唯一安息を感じる時間だと言ってもいい。

俺はアイテムを売却しようと、馴染みの買い取り屋に足を向けた。

転移門のある
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