Side Story
少女怪盗と仮面の神父 32
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「お前が風邪で寝込んでる間に。ああ、一応言っとくが、この情報は王室と実際に配布されている貴族しか知らない特秘事項だからな? ちょっとでも誰かに洩らしたら、適当な罪状をちょちょいと捏造した上で、お前と一緒にそいつの首も刎ね飛ばすぞ」
「え……、は……はぁあ?? ちょっと待って、それって!」
「はっはっはっ。今更戸惑う理由がどこにある? 今まで通り、誰にも何も悟られなきゃ良いだけの、至極簡単な話だろ?」
「それのどこが簡単な話だ、どこが! あんた、悪魔?? 人間の皮を被った悪魔なの??」
人間、秘密と呼ばれる物を無理矢理暴いて大勢で共有したがるのが常だ。
王室や貴族や豪商が相手なら尚更、怪しい影はないかと国民の一人一人が異様なほど具に目を光らせているのは自明の理。
そんな中で、言葉にしなくても行動やなにやらで誰かにわずかでも疑問を抱かれたら、その人ごと消しちゃうぞ? とか。
なんという恐ろしいモノを気軽に押しつけてくれたんだ、この男!
「……あまり追い詰めないでください、エルーラン殿下。ただでさえ状況を呑み込めなくて混乱しているんですよ、彼女は」
傍らで、黙って成り行きを見守っていたベルヘンス卿が、ため息混じりにミートリッテの頭をぽんぽんと叩いた。
「だからこそ私が直接丁寧に教えてやってるんじゃないか。お前達だって、まだ何も話してなかったんだろ?」
「殿下がそのように命令されましたので」
「情に絆されてなくて一安心だ。お守り役、ご苦労さん」
「際どい所で留まっている感は拭えませんが、これも我々の職務ですから」
「はは。優秀な部下の存在は、幸運以外の何物でもないな」
マーマレードの器より小さなガラス瓶に栓をして騎士服の内側へしまった男性も、気安い様子でベルヘンス卿の肩をバシバシ叩いて笑う。
「…………殿下?」
「ん? お前は『お父様』で良いんだぞ? ミートリッテ」
流れる涙をそのままに唖然と立ち尽くし……
ベルヘンス卿を見て、アーレストを見て、最後に目の前の男性を見る。
そんなミートリッテの髪をぐしゃぐしゃ掻き回す男性の若葉色の虹彩が、楽しげに細まった。
(殿下。アルスエルナの王室。騎士の青年が命令を受け取り、敬称や敬語を使う相手。ベルヘンス卿を部下と称したこの人は、まさか)
「あ、貴方……アルスエルナ王国の王子様ぁああ??」
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