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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 32
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毎分戦々恐々としてるんだぞ? 特に、こんなにも稀有で面白いネタなら無駄に遊ばせておく奴じゃないってのは、長年傍に居続けたお前が一番よぉおーく理解してる筈だ。結局、俺もお前もこいつらも、あいつが欲求を満たす為に用意した手駒の一つなんだよ。残念ながら、な」
「…………」

 お腹を抱えながら、体を折り曲げて笑いを堪える男性。
 その右手の親指がミートリッテを示すと、見えない線を辿るアーレストの目が妙に暗く翳った……気がする。

(……私? 私の顔が、なに?)

 首謀者とか面白いネタとか、これもまた妙に不穏な言葉達だ。
 首を傾け、何の話なのかと無言でアーレストに問いかけてみる。が。

 ぷいっ、と。
 露骨に顔を逸らされてしまった。

 そういえば、村を案内した時もいきなり顔を逸らしていたし。
 初めて会った時も何故か目を丸くされた。

 これは……二人揃って、自分の顔を見るに堪えない愉快なモノだ、とでも言いたいのだろうか。
 そりゃ、美辞麗句(びじれいく)にすら無縁な造りだとは自覚してるし。
 生まれついてのものを、今更悲観するつもりもないけれど……

 こういう場合は、ぶん殴っても怒られないかな?
 良いよね? 少しくらいキレても。

「つーワケで、だ……」

 ふと。
 神父の失礼な態度を喉で低く笑いながら、ミートリッテに対してアレだの手駒だのと一層失礼なセリフを吐いた男性が、背筋をビシッと伸ばし

「感動の再会といこうじゃないか! 愛しの()()()、ミートリッテよ!」

「ひぃっ??」

 突然、くるん! と勢いよく振り返り。
 両腕を広げてミートリッテに突進。

「な、なになに?? なっ、え、だっ……! ふ、っんぎゃあああああ????」

 中肉中背な見かけに反した力強さで、ガバッと抱きついてきた。

「だ、だだっ、だれ?? なにもの?? アナタはどこのどちらさまああっ??」
「うん? んんんー? 父親の顔を思い出せないなんて、薄情な娘だなあ。私はいつだって、お前達母子(おやこ)の幸せを思っていたのに」
「ち、父親あっ?? なに言って……??」

 背けようとする顔に頬ずりしてくる見知らない男性は。
 もちろん、ミートリッテの父親などではない。
 実の両親は病で倒れ、海に溶けて永遠の眠りに就いたのだから。

 第一、肩甲骨の下辺りまで伸びた金髪を首筋で一つに束ねている男性は、どう見ても二十代後半……アーレストより少し年上? くらいだ。
 十八歳になったばかりの実子がいるとしたら、立派な犯罪だろう。

(親しげに話してるし、この人もアーレスト神父の顔見知りで変人仲間?? 類は友を呼ぶってやつ?? やだやだ、そんなのに親子扱いされ
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