第4話 トリル ・ グレアム
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な雰囲気の漂う空間を目指して喫茶店を開いたのだが、ヴィヴィオよりも長く空間にいたはずのなのはには何も感じて貰えていないでいた。
彼女は喫茶店の開店初日に遊びに来た時、室内を見回して――
「なんか、翠屋とは違う新鮮な雰囲気だねぇ」
そんな言葉を、悪びれた様子もなく彼に言い放っていたのだった。
その言葉と彼女の表情を彼は今でも鮮明に覚えている。
それが喫茶 「翠屋」 の雰囲気を十数年間、肌で感じ続けてきた人間に突きつけられた現実であった。
勿論、翠屋とは年季が違う。培ってきた基礎が違うのである。
片や、翠屋は何年も続く喫茶店。しかし彼の店は今日が初日。
しかも彼には下積みが全くない状態だった。
実は開店日の数ヵ月前まではミッドチルダの治安を維持する為の下積みをしていたのである。
そんな彼が喫茶店を開くキッカケになった士郎に師事を仰ぎ、どうにかこうにか開店に漕ぎ着けた様な喫茶店に、オリジナルの様な雰囲気など出せる訳がない。
その点は彼にも承知の上であると同時に、特に負の感情を抱いているから鮮明に覚えている訳ではなかった。
ただ、その時に見たなのはの表情。彼に向けられた純粋な笑顔が非常に魅力的であり、それが喫茶店を開こうと思った本当の理由だったからである。
それから幾年が経過した現在。
当然ながら喫茶 「翠屋」 との年季の差は埋まらない。
しかし彼の喫茶店の基礎は出来上がりつつある。
なのはは、今の彼の喫茶店を見て何て答えるだろう?
彼女が数年前の何気ない一言を覚えているとは思えない。
しかし仮に覚えているなら、あの時と同じだろうか? 少しは変化しているだろうか?
彼はそんなことを胸に抱いていた。
とは言え、聞きたいとは思っていない。聞こうとも思っていない。
ただ、どうなのだろうと思うだけなのだ。
そんな特に待ち望んではいなかった彼の元へ――欲しかった答えをくれたのが、なのはの娘であるヴィヴィオだったことに彼は嬉しく思っていたのである。
血の繋がりはなくとも親子は親子。同じ環境にいれば自然と似てくるものだ。
斯く言う彼がそうである。
彼はヴィヴィオを見て、出会った頃のなのはの雰囲気を感じていた。だから、なのはの雰囲気を感じているヴィヴィオに言ってもらえることが嬉しかった。
勿論、それが嬉しかったからと言う訳でもないが、ヴィヴィオや彼女の友人達とも懇意に接していた。
そんな経緯を経て、トリルから異世界の話を受けたはやてから、なのはの元へ来た話だったのだろう。
☆★☆
ヴィヴィオ達ミッドチルダからの来訪者の紹介が終わると――今度はホスト側として、ミルヒが笑顔を浮かべてシンクとエクレとリコの紹介を始める。
ミルヒとエクレとリコは、そ
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