第2話 初めて ・ 久々 ・ フロニャルド
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胸のうちを知るリコだけが、彼を睨む彼女の苦労に同情するかの様に、苦笑いを浮かべて見つめていたのだった。
☆★☆
4人が目指す目的地――。
彼がフロニャルドへ来ている時には必ずと言って良いほどに、ミルヒと訪れている朝の散歩をしている大草原。
そこへ異世界からの来訪者が転送されてくる手筈になっていた。そう、召還ではなく転送。
来訪者達は召還と言う手順を取らなくても来ることが可能なのだと言う。
そのことを考えていたミルヒは、少し難しそうな表情で目の前の道を眺めていた。
しかし自分では到底理解できないことなのだろう。それは無理もない話だと思う。
何故ならば――自分が知る限りでは、この大陸への来訪者は勇者のみ。異世界の存在も、彼の話の中に出てくる彼の世界しか知らないのである。
それ以外の情報を知らない彼女には、召還以外で行き来ができる方法など知る由もない。そして――
彼の住む異世界以外の世界など、今の段階では誰も知らないのである。
いくら考えたところで納得のいく答えの見つからない彼女は、彼に来訪者がどんな人達なのかを訊ねることにしたのだった。
「――ねぇ、シンク?」
「何ですか、姫様?」
「今日、来られる方逹は……どんな方逹なのですか?」
「……いや、実は僕も良く知らないんだよねー」
彼は苦笑いを浮かべて彼女の問いに答える。
「――おい、貴様っ! 良く知らないとは何なのだ!? …………」
「――ウワッ! とっとっと……」
「――わわわっ! ……エ、エクレェ……危ないでありますよぉ」
「す、すまん……。…………」
彼の言葉を聞いたエクレは、良く知りもしない人物を我が国へ迎え入れる――
そんな親衛隊の隊長としては聞き捨てならない言葉に、思わず自分の乗るセルクルを彼のセルクルにぶつける勢いで近づける。そして怒気を含んだ口調と、睨みを効かせた表情で、身を乗り出しながら問い質していた。
その勢いに慌てて身体を仰け反り、思わず手綱を離して落ちそうになるのを堪える彼。
そして彼女が突然に軌道変更などするものだから、同乗していたリコは、慌ててセルクルの首にしがみついて振り落とされない様に踏ん張っていた。
何とか振り落とされずに済んだ彼女は後ろを振り向き、涙目になりながらエクレに対して注意を促すのであった。
自分の懐付近で涙目で注意を促した彼女の方を向いて謝罪を済ませるエクレであったが、再び視線を移して併走する彼の方へ、未だに弱冠前のめりになりながら睨んでいる。
「い、いや? ……紹介者は、良く知っているよ?」
彼女の気迫にタジタジになりながら、彼女の前のめりの姿勢に押し出されたかのように、弱冠身体を仰け反らせて逃げ腰と言うか及び腰と言うか――へっぴり腰の体勢で
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