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SAO−銀ノ月−
第百十八話
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、当のルクス本人が気にしていないのだから、俺たちが怒るのも筋違いだ。

「それに、今は違うんだろ?」

「そう……だけど」

 さらに言うなら、グウェンがあのPK集団たちの情報をリークしてくれたおかげで、俺たちはこうしてパーティーに勤しめている。それはグウェンがPK集団たちと袂を分かったことへの証左であり、その通りにグウェンは俯きながらも頷いた。

「何でリーダーやめたのか、聞いてもいいか?」

「……怖くなったの。みんな、本当にあのデスゲームに戻りたいって、心の底から言ってるみたいで……あいつが来てから」

 身体を恐怖に怯えさせながら、グウェンはそう語った。あいつ――キリトが引導を渡したという、PoHを真似たSAO生還者の男。自らの仲間に引き入れる技術も真似ていたのか、グウェン以外は手勢にしていたらしい。

「私は……私はあんなデスゲームじゃなくて、またルクスと、楽しく遊びたかった、だけ……なの」

「……なら、そうすればいい」

 そのまま徐々に、グウェンは感情を露わにしていく。あのデスゲームで親友になったルクスと、ただ遊びたかっただけ――という言葉を肯定すると、グウェンは驚いてこちらを見た。

「でも私……人は死なせたりなんかしてないけど、オレンジで……でもああしないと、あそこを生き残れなくて……」

「確かに許されることじゃない。ルクスだって……いや、みんな同じだ。でもこうやって、みんな遊んでる」

 ラフィン・コフィンに属して攻略組の情報を探っていたルクスだけでなく、守れなかったことや死なせてしまったこと、忘れたいこと――自分たちSAO生還者には、そんなもの幾らでもある。グウェンだけではないが、グウェンとて例外ではない。

「ゲームを楽しんでいこう。もうここは、デスゲームじゃないんだ」

「ゲームを、楽しむ……」

 その言葉に、グウェンは鳩が豆鉄砲を喰らったような表情になった。まるで考えてもいなかった、という言葉が相応しく、グウェンはしばし沈黙する。

「そっか。ここじゃ、人を襲わなくてもいいのね……」

 あのデスゲームをオレンジプレイヤーとして生き抜いた脅迫観念が、グウェンとPK集団をSAOの亡霊として駆り立てていた。他人を犠牲にして自己本位に生きなければ、あの世界では死んでいたという脅迫観念だ。

「私、ルクスと楽しく遊びたい……いいの?」

「謝ってからな」

 しかしここではモンスターに返り討ちにされようが、本当に死ぬなんてことはなく、わざわざプレイヤーを狙う必要はないのだ――と、そう気づいたグウェンは、『SAOの亡霊』から抜け出した。彼女からの問いかけに、冗談めかして返答しておくと、グウェンはばつが悪そうに目を背ける。

「……ごめんなさい」


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