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非日常なスクールライフ〜ようこそ魔術部へ〜
第36話『一致と相違』
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随分と買い被られていたことにむず痒さを覚えるも、嬉しさも感じたので黙っていた。


「・・・ほう。魔法を使えるのか。こりゃ面白ぇ」

「そうそう」

「だったらお前ら、一度手合わせしてみたらどうだ?」

「もう、そんな話のためにここに来た訳じゃないからね」


頬を膨らませ、拗ねた態度をとるユヅキ。
一方、そんな態度は慣れっこのようで、ラグナは笑って誤魔化すと話を始めた。


「つまり、ハルトに店を紹介してくれたんだな? そいつぁありがてぇ」

「俺お金持ってないけど…」

「お、じゃあここでユヅキと一緒に働くんだな」


気分が良いのか、先程からずっと笑っているラグナ。
晴登もその発言に愛想笑いを返す。

・・・ん? ユヅキと?


「ユヅキはここで働いているんですか?」

「おうよ。一人暮らしってんなら、断る理由もねぇしよ」

「ラグナさんもボクにとって恩人に当たる人だね。お金がなくて困ってた時に、この店で働かないかって誘われたんだ」

「へぇ〜」


ユヅキの思い出話に頷きながら納得。
確かに、一人暮らしならお金は自分で稼がなければならない。見たところ、誰かから支給があるって訳でもなさそうなユヅキにとって、それは千載一遇のチャンスだったのだろう。


「まぁ、その当時と今とじゃ売り上げは全然違うけどよ。今時、時計なんてどの家庭にもあるからな」


突然寂しそうな口調になるラグナ。
時代の流れを感じたのか、その表情からは諦めの念が読み取れた。

このままでは、ユヅキもラグナも居場所を失う。
そう悟った晴登の行動は…早かった。


「じゃあ俺が呼び込みをしますよ!」

「「え?」」

「だから、呼び込み! そうしたら、また店に人が寄ってくれるんじゃないですかね?」


晴登は、自分の思う最高の案を述べる。
それを聞いた2人は少し考え込むと、口を開いた。


「呼び込みつっても、そんなに甘くねぇぞ?」

「さっきラグナさんが言った通り、寄ったとしても買っていく人は少ないんじゃ…」


否定。
猛烈、とは言わないが、晴登はそのくらいの威力を感じた。そして自分の出した稚拙な案を後悔する。


「そ、そうですよね…」

「んん…その、あれだ。呼び込みはいいから、店を手伝っちゃくれねぇか? 客が来なくても、時計の整備だけは忙しいからな」

「あ、わかりました」


今日合わせても3日間。
そのくらいの短期間なら良いだろうと、晴登はその誘いを承諾した。
ユヅキも一緒ならば、大して不安はない。


「んじゃ、明日からよろしく頼むわ」


でもって、もう職業体験1日目が幕を閉じたのだった。



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