おくりび山。過去との決別
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「さっきから黙って聞いてれば……あんたら、まずルビーに言うことがあるんじゃないのか!?」
「なんだお前、さっきまで黙っていたと思えばいきなり――」
父親がサファイアを叱咤しようとするが、それすらも遮ってサファイアは大声を張り上げた。
「家族が帰ってきたら!まず最初は『おかえりなさい』だろ!大事な家族が旅から帰ってきたんだったら!温かく迎えるのが家族なんじゃないのか!!」
その言葉には、ルビーを含めた全員が驚いたようだった。ルビー自身、家に戻ったときにおかえりなさいなど言われたことはなかったから。
「ふん……小童が何を言うかと思えば。うちは貴様のような凡愚とは違うのだ」
サファイアの剣幕に一瞬怯んだが、祖父は鼻を鳴らして言い捨てる。
「この家がなんだろうと、関係ない!ルビーのことをこんな風に扱うんだったら、ルビーをこんな所には置いておけない!」
「なにっ……!?」
「あなた、本当にいったい何なの!?あんたはルビーのなんだって言うのよ!」
「置いておけないって、じゃあお前はこの子をどうするつもりなんだい?」
「俺は……」
自分にとってはルビーはなんなのか?ルビーにとってどういう自分でありたいのか?思えばカイナシティから頭のどこかで考えていた疑問に、今答えを出す。
「俺は……ルビーのこと大好きで、一生幸せでいてほしい。だから、あんたたちがルビーのことこんなふうに扱うんなら、ここから連れ出して……俺と一緒にいてもらう!」
それがサファイアの偽りない気持ち。口に出してみれば、なんの後悔も恥ずかしさもなかった。ルビーが思わず目頭を熱くする。サファイアの態度が本気だと思ったのか、母親がルビーに縋るように言った。
「な……何を勝手なことを言ってるのかしら。ルビー、あなたは違うわよね?このおくりび山を守る家の使命について、何度も聞かせてきたものね?それを放り出してこんな勝手な男についていこうなんて、考えたこともない、そうよね?」
「母上……ボクは」
ルビーが目を閉じる。彼女の考えがまとまるまで、サファイアは黙っていた。ルビーを幸せにしたいなら、彼女の意思は大事にする必要があると思っているからだ。それが、家の使命を押し付けるルビーの家族との違いだった。
「ボクはこの家の使命のこと……大事に思っています。その為なら、どんな厳しい修行でも、辛い言葉でも耐えなければいけない。そう思っていました」
そう聞いて、ルビーの家族の顔がほころぶ。だがルビーの言葉はまだ終わっていない。
「でも、ボクは彼……サファイア君と出会って、旅して教えてもらったんです。ボクは決して無価値な人間ではないと。こんなボクでも、認め
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