サファイアの失意、ルビーの成長。
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が零れる。
「俺……ポケモントレーナーになんて、ならなきゃよかったのかな」
「ずっとミシロタウンで……テレビの中のシリアに憧れてれば、皆痛い思いなんてしなくてよかったのに……!」
夢が砕けた少年の嗚咽と、仲間への懺悔は、とても痛々しかった。致命的ともいえる一言を放ったとき、部屋の外で彼の様子を伺っていたルビーが思わず入ってくる。
「それは違うよ」
「ルビー……」
暗い部屋の中にドアを開けて入ってきた彼女は外から差し込んだ一筋の光のようで、サファイアには眩しく感じられた。
「兄上に君が憧れてくれたおかげで、ボクは君に出会えた。そのことだけは……兄上に感謝してる。勿論君にもさ」
「え……」
「……この前、ボクが君の部屋で一緒に寝ていた時のことを覚えているかい?」
「そりゃあ、忘れるわけないだろ」
元気のないサファイアに、ルビーは子守唄を歌う母親のように優しく語り掛ける。
「ボクはね。あの時夢を見たんだ……君に出会う前の夢をね。君に会うまで、ボクは……自分なんて本来何の価値もない、不必要な存在だって思ってた」
「そんなこと、あるわけない」
「自分が落ち込んでるときでも、君はそういってくれるんだね……好きだよ、そういう所」
「……それで?」
サファイアは話を促す。いかに自分の夢が壊れても、他人が――いや、大切な人が自分に価値を見いだせないなんて話を放っておけるサファイアではなかった。
「ボクは兄上が出ていくまでは家の不要物として、そして出ていった後は巫女としてあるべく育てられていてね。才能のないボクは、誰にも認められていなかった。兄上は、不要物である僕を蔑んでいた」
「……!」
「もう死んでしまった方がいいんじゃないかと思うこともあったよ。でもそんな時……君が、君だけが僕を認めてくれた。そんなことが出来るなんてすごいってね」
自分の辛い過去を語る。それは、自分も辛いんだから君も頑張れという内容ではない。
「だからね、君がポケモントレーナーを、兄上を目指したことは無価値なんかじゃない。それはボクにとっては絶対に変わらない」
珍しく、強く断じてサファイアの目を見つめるルビー。紅い瞳と蒼い瞳が、お互いを見つめ合う。
「わかった。話してくれてありがとうルビー……だけどさ。俺、これからどうしたらいいんだろう」
自分が彼を目指してきたこと自体には意味がある。それでももう今は彼を目指すという夢は砕け散ってしまった。弱音が漏れる。
「それは……ボクには、わからない。チャンピオンを目指すのをやめたいっていうのなら、ボクに止める権利はない」
ともすれば突き放すような言葉。だけど、ル
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