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剣聖がダンジョンに挑むのは間違っているだろうか
第1話・改訂版
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タウロスの捜索を始めて数分後。迷宮(ダンジョン)内に冒険者の悲鳴が轟いた。この時、私だけでなくベートさんも下位の冒険者がミノタウロスと接触したと察していたと思う。

だからこそ、私とベートさんは自分の出せる最大速度で悲鳴の聞こえた所へと向かった訳なんだけど、ミノタウロスに襲われていたと思しき冒険者は、既に別の冒険者に助けられていた。

紅髪で騎士服を纏った少女。オラリオ史上最速の5年でLV.1からLV.10に至った世界最速記録保持者(ワールドレコーダー)


「………【剣姫】アイズ=ヴァレンシュタイン?」


刀と呼ばれる極東の剣を向けながら私の名前を口にする彼女の名は―――


「………【剣聖】テレシア=ヴァン=アストレア」
「アイズ、1人で突っ走――って、そこの雌!誰に剣先向けてんだ!!」
「……ごめんなさい。後ろから近付いてくる気配に体が勝手に反応しちゃって」
「ううん。声も掛けずに後ろから近付いた私の方が悪いから……」
「おい!雑魚が俺を無視してアイズと話してんじゃね―――」


相手が誰かも気付かず、【剣聖】の肩に手を掛けようとするベートさん。だけど―――


「ガッ!!」
「雑魚、ね。相手の実力も見極められないと恥を掻くだけでなく、駄狼呼ばわりされることになり兼ねませんよ?」
「グハッ!!」


【剣聖】は肩に触れられるより早くベートさんの腕を掴み、掌底を鳩尾に叩き込んだかと思えば、そのまま流れるような動きで地面へと投げ飛ばした。

そのまま地面に仰向けの形で叩き付けられたベートさんは、更に鳩尾へと踵落としを落とされたことで白眼を剥きながら気絶し、その口からは泡を吹いていた。


「……あっ、ごめんなさい。お仲間さんの発言にイラッとして思わず……」
「さっきのはベートさんが悪いから、気にしないで。それにあなたには私達ロキ・ファミリアの尻拭いをさせちゃったから」
「尻拭い?」
「うん、ミノタウロスの討伐。……ベートさんの件も含めてお詫びをしたいんだけど―――」
「別にいいですよ。私もそのベートって駄狼(ヒト)を伸しちゃいましたし。もしお詫びしたいなら、それは襲われていた冒険者にしてあげて下さい」
「襲われていた冒険者って、さっき走って行った白髪の?」
「はい。白髪紅眼の特徴的な冒険者だったので、ギルドで問い合わせればどこの派閥(ファミリア)所属か分かると思いますよ」
「………分かった」
「それじゃあ、私は本拠地(ホーム)に戻る途中だったのでこれで失礼します。また縁があれば会いましょう」
「あっ―――」


【剣聖】は最後にそう言うと目にも映らない速さでその場から姿を消した。もっと色々と話がしたかったのに。


「………【剣聖】テレシア=ヴァン
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