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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十四話 副司令長官
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立ち去った。一瞬追わせるべきかとも思ったが、止める事にした。連中は一筋縄ではいかなさそうだ、下手をすると死傷者が増えるだけだろう。

「トゥルナイゼン少将、さっきの男は誰だ? 憲兵隊のようだが……」
「キスリング准将が急用が出来たので代わりに捕虜を受取りにきたと言っていました」

案の定だ、キスリング准将の表情が厳しくなった。黄玉色の瞳がボイムラー大佐が去っていく方向を見る。
「俺はそんな事は誰にも頼んでいない」

「憲兵隊のボイムラー大佐だと。憲兵隊本部にも確認しましたがボイムラー大佐は宇宙港に捕虜を受け取りに行ったと言われましたよ」
「ボイムラー大佐なら知っている。此処に来ているよ、卿が言った様に捕虜を受けとりにな。だが、あの男じゃない」
キスリング准将が吐き捨てるような口調で言葉を出した。

「なるほど、良い所に准将が来てくれました。もう少しであの男に捕虜を渡すところでしたよ。あの男、一体何者です?」
「……」
准将は厳しい表情をして口を噤んでいる。

「教えてはいただけませんか」
「……おそらく内務省の人間だろう」
「……」

内務省? 意外な言葉に面食らっている俺に准将は薄い笑みを見せた。
「驚いているようだな、少将。十月十五日の勅令で追い詰められたのは貴族だけじゃないって事だ。皆生き残りをかけて戦っている、これまで得たものを失わないために、或いは新しく何かを得るために」
「……」

「此処へ来る途中、地上車が故障した。どうやら最初から仕組んだようだな、と言う事は……」
「と言う事は?」

「ラートブルフ男爵の持つ情報はそれなりのものだと言う事だろう。これから忙しくなるだろうな」
「……」
キスリング准将の黄玉色の瞳が酷薄な色を見せて光っている。准将は獲物を見つけたようだ、それも飛び切り最上の獲物を……。




帝国暦 487年 12月17日  ローエングラム艦隊旗艦 ブリュンヒルト  ヒルデガルド・フォン・マリーンドルフ


旗艦ブリュンヒルトの艦橋は重苦しい沈黙に包まれている。原因はただ一つ、司令官ローエングラム伯の不機嫌にある。提督席に座っている伯は明らかに不機嫌な感情を周囲に発している。整った顔立ちだけに不機嫌さを表に出されると皆敬遠してしまうのだ。

事の起こりは四日前の事だった。シュターデン大将率いる三万隻の貴族連合軍がフレイア星系を制圧中のメルカッツ副司令長官率いる本隊をすり抜けオーディンに侵攻中との連絡がエーレンベルク軍務尚書から入った。

そしてメルカッツ提督は現在シュターデン提督を追撃中、ヴァレンシュタイン司令長官が迎撃に向かうからローエングラム伯率いる別働隊はこのまま辺境星域に向かうようにと。

そのときのローエングラム伯の反応は余り思い
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