暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン58 鉄砲水と精霊の森
[9/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
なく見慣れた地縛神のものだ。そして上に乗った男が下を指さして何事か叫ぶと、チャクチャルさんも動きを止めて燃え続ける家を見下ろして口をゆっくりと開く。
 次の瞬間、目の前の家が吹き飛んだ。呆然としてチャクチャルさんを、たった今中に人が残っていた家に向かって攻撃をぶちかました地縛神を見る……上の男は今の光景がたいそうお気に召したようで、体を震わせて大笑いしていた。周りでパニックになっていた人々も全員上を見て、その場にどっしりと浮かぶ神の姿を捉えていた。
 それに気づいた男が、眼下の人々をざっと手で指し示してチャクチャルさんに何事か呟く。再びその巨体を震わせ、まるで水中を泳ぐかのように流麗な動きで神が動こうとする。その次に起きることが予想できていながらも、僕の体は動かない。僕の声も、今ここにいる人たちには届かない。目の前の人たちの表情ひとつひとつまではっきり見えていながら、どうすることもできない。

「や、やめ……」

 そしてまた、破壊の嵐が吹き荒れる。人が、家が、木が、岩が、全てがなすすべなく吹き飛ばされ、打ち付けられ、その後には廃墟すらも残らない。もはや動くものが何もなくなったことを確認した男が、暇そうにしながらまた別の方角を指す。その先には、また別の街が。
 そこで急に視界が暗転し、気が付くとまた最初の部屋の中に戻っていた。

『おっと、終わったと思ったか?残念だったな旦那、まだ終わりじゃねえときたもんだ。そーらよっと』

 また指を鳴らすと再び視界が暗転し、今度は別の街……山のふもとの小さな街が燃えているど真ん中に切り替わる。あちらこちらで火の手が上がる上空には巨大な2羽の鳥の地縛神がその翼で月を覆い隠し、山の向こうからは人型の地縛神がその上半身を突き出してあのラビエルに勝るとも劣らない太さの剛腕をゆっくりと逃げ惑う人々めがけて伸ばしている。トカゲの地縛神はその細い腕と伸びる舌で人間を目につくままにその口へ運んでいるし、蜘蛛の足元では目がうつろな人々が操られているかのようなぎこちない動きで逃げる人に襲い掛かっている。猿の地縛神も、長い尾をクルクルと巻いたまま器用にバランスを取って跳ね回っては足元を無邪気そうに破壊し続けている。
 このままだとこの小さな街に住む人が全滅するまでにはそう時間もかからないだろう。そう思った矢先、僕のすぐ横をすり抜けて何人かの地縛神の宴から逃れた人が街の出口に向かって走っていくのが見えた。お互いを励まし合い、物陰に隠れながらなんとかここまで来たのだろう。外に出たからといって助かる保証などまるでないが、それでもここにいるよりは未来があると踏んだらしい。あと少し、あと少しで壊れていく街から外に出られる……そこまでたどり着き、彼らの顔にもようやく希望の色が見えてきたところで突然集団の先頭が足を止めた。その見上げ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ