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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン58 鉄砲水と精霊の森
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が勘付いたせいでとんだ邪魔が入ったからな』

 あの時と同じく夢に出てきた……夢といっても、嘘の存在というわけではない。体を失った後も精神体となって害虫以上のしぶとさで生きながらえてきた、先代ダークシグナー。
 あの時はチャクチャルさんが助けに来てくれたし、メタイオン先生が覚醒することで存在ごと消し去った、はずだったのだが。目の前で気楽そうにしているこの男はいかなる方法を使ってか、神々の攻撃をも耐え抜いてしつこく僕の頭の中にいたらしい。

「それで、何しに来たのさ」

 悔しいけど、チャクチャルさんも他の仲間もいない今の僕ではこの男にはどうやっても勝てっこない。僕は大賢者にも指摘されたように自分の持つ力がどんなものかすらロクに把握できていないのに対し、相手はその力を5000年間研磨しつづけてきた化け物だ。こうして夢の中に入り込んで話をする技ひとつとってみても、僕には一体どうやっているのか見当もつかない。力づくで追い出せない以上、黙って相手のペースに乗るしか方法はない。

『いやいや、そう警戒しなさんなよ旦那。あの老いぼれの話はなかなか面白かったが、どうやらお前は半信半疑だったみたいだからな。せっかくだから、面白いものを見せてやろうと思ってよぉ』
「面白い……?」

 その言葉に含まれた不穏な調子に、咄嗟に目を閉じようとして……できない。目を閉じるどころか、指1本ピクリとも動かせない。強引に力づくで動こうともがいている僕を嘲るように笑い、ぱちりと指を鳴らす先代。突然周りの景色が真夜中の、妙に古めかしい街に切り替わった。

「こ、ここは……」
『我が麗しの今は亡き故郷、今でいうところのナスカの地さぁ。ククク、ほれ、あっちで火事が起きてるだろ?』

 指さした方を反射的に見ると、石造りの建物から盛大に火が上がっていた。月明かりが霞むほどの光を放つその火事のせいで、電灯のひとつもないのに周りの景色はくっきりとよく見える。その2階部分には逃げ遅れたらしい人がいて懸命に外に助けを求めているが、周りはみなパニックになっていて誰も上の叫び声に耳を傾ける者はいない。
 幻覚か何かだ。そう頭ではわかっているのだが、その光景の余りのリアルさについ助けを求めている人のもとへ1歩を踏み出しそうになる。すると突然、雲もないのに上空に影がかかった。

『ほれ、俺のお出ましだ』

 その言葉に上を見ると上空に浮かんでいたのは、巨大なシャチのシルエット。その上には、僕と同じフードつきのローブをすっぽりとかぶった男が座り込んで愉快そうに笑っている。

「チャクチャルさん!」

 僕の声が聞こえないかのように……いや、実際聞こえないのだろう。これはあくまで映像、今起きていることじゃない。悠然と紫色の軌跡を引きながら星の海を泳ぐその姿は、まぎれも
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