ターン58 鉄砲水と精霊の森
[7/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
人間だろうか。握られた拳の隙間から、いくつもの人の手足が覗いている。
「かつて人間界で行われたシグナーとダークシグナー。彼らが操った6体のドラゴンと、地縛神の戦いに関する文献だ。私が直接見たわけではないが、この本の著者は信用できる人物だ」
挿絵からひとまず目を離し、本文に目を通す。そこに綴られていたのは、古代ナスカの地に起きた破壊の記録……字面を追っているだけで目を覆いたくなるような、地獄絵図と呼ぶにふさわしいものだった。たくさんの人の命が地縛神の糧となり、その被害がナスカを飛び出し世界に広がらんとしていた。そんな時に突如現れた、腕に赤き龍の痣を持つ人間たち……シグナーの活躍により全ての地縛神は封印されダークシグナーは灰となり、生き残りのナスカの人々はその跡地である地上絵を祀り、2度と封印が解けないよう祈り続けた、らしい。
読み終えたのを確認し、何も考えることができずにぼうっとしている僕の肩に手を置く大賢者。優しげな声からは、心の底から心配してくれているのが伝わってきた。
「今日はもう遅い。ここに泊まるといい」
大賢者の館の1室、僕にあてがわれた客間。あの後夕食までごちそうになり、勧められるままにベッドに潜り込んだものの、混乱した頭でずっとあの本のことを考えていたせいでお礼すら言えなかったし、何を食べたのかも思い出せなかった。
申し訳ないとは心の中でチラリと思うものの、そんな思考もまたすぐあの本の内容にかき消される。チャクチャルさんが、あのチャクチャルさんが、あんな風に世界を、街を、何の罪もないナスカの人を……何かの間違いだ、と思う一方で不思議とあの内容は本当のことだ、と信じる気持ちもあった。
「寝よう。寝よう寝よう、もう今日は寝る!」
誰もいない部屋の中で自分に言い聞かせるように叫び、無理やり目をつぶる。眠気は全然感じなかったのでしばらくかかるかと覚悟していたが、意外なほどあっさりと意識が薄れていった。
『よお、旦那』
誰かが呼んでる声がする。うるさいなあもう、人がせっかく寝たってのに。また起きたら現実と向き合わなきゃなんだから、せめて寝てる時ぐらい邪魔しないでほしいものだ。
『おいおい、俺のこと忘れっちまったのかい?寂しいねぇ旦那』
いや待て、この声には聴き覚えがある。そうだ、確かあの時もこんな……そこまで考えた時点でいっぺんに前の記憶を思い出し、ベッドから瞬間的に跳ね起きた。にやにやと笑い、だがその目は全く笑っていない目の前の男をあらん限りの敵意を持って睨みつけ身構える。
「生きてやがったのか……!」
『まあな。いやー苦労したぜ、あのクソ神に気づかれないようひたすらじっと存在隠して、お前が奴と離れるこの瞬間をずっと待ってたんだからよぉ。なにせ、前回は奴
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ