ターン58 鉄砲水と精霊の森
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くり返してくれた、何物にも代えられない大切な仲間にして神様。
そんなチャクチャルさんの過去を本人は特に言いだそうとしなかったし、だから僕もずっと聞かなかった。いや、むしろ聞かないようにしていた。だから昔のチャクチャルさんについて僕が知っていることは五千年前からカミューラ戦の時までずっとナスカの地で地上絵として封印されていたことと、その封印前には先代のダークシグナーとしてある男を僕と同じく死の淵から引っ張り上げていたことぐらいだ。
……この老人が知っている話を聞いてしまったらもう後には戻れない、そんな予感がする。今ならまだ、全ての話を聞かなかったことにしてここから出ていくことだってできる。そうすればチャクチャルさんと再会してもこれまで通りに、過去のことなんて何ひとつ詮索せずにそれなりの関係を保ったままでいられるはずだ。だけど、本当にそれでいいのだろうか。僕の知らないチャクチャルさんの話を知る格好の機会から逃げるのは、正しいことなんだろうか。それに僕が時折暴走するときもチャクチャルさんの過去、というかその力が絡んでいるのだとしたら、もしかするとあの怒りを制御できるヒントが隠れているかもしれない。
しばらく迷った後、僕も覚悟を決めることにした。
「……教えてください、お願いします」
それを聞いて老人が重々しく頷き手を伸ばすと近くの本棚から1冊の本が音もなく抜け出して滑空し、その手にすっぽりと収まった。
「私のしていることは、もしかしたら間違っているのかもしれない。君が何も知らないというのなら、それは知らない方が幸せなのは間違いないだろう。だが、やはり君は知っておいた方がいいと私は思う。自分の力のルーツを知ることでそれを制御する、それは魔法も人生も変わりないことだからな。何も知らずに行使するには、その力はあまりに強大すぎる。君の言う、五千年前に地縛神が封印された際の出来事……それは我々の世界にも、文献として伝わっているのだよ」
そう言いながら慣れた手つきで飛んできた本のページをめくり、やがて目当ての箇所にたどり着いたのかその手が止まる。そのページを開いたままこちらに持ってきて、僕にそっと渡して中を読むように促した。
「こ、これって……」
まず最初に目についたのは、その挿絵だ。古めかしい紙の上に生き生きとした筆遣いで描かれているのは、紫の模様が入った黒いシャチの姿を模したモンスター……まぎれもなくチャクチャルさんが、どこかの石造りの都市を蹂躙しているイラストだった。その隣には見たことのないモンスター、チャクチャルさんと同じような黒い体にそれぞれ違った色の模様がついた、動物をモチーフとしている存在が同じように暴れまわっている。この二足歩行するトカゲのようなモンスターが掴んで口に運ぼうとしているのは、もしかしなくても
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