暁 〜小説投稿サイト〜
遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン58 鉄砲水と精霊の森
[11/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
わかってたのさぁ。おまけにお前は馬鹿だから、あいつがお前のことを心配してくれたんだと思い込んでますます信用するようになる。あいつにとっちゃあ願ったり叶ったり、一石二鳥狙いの寸法だったのさ』

 何か言い返さないと。そう思うのに頭が麻痺したようになって、何も口に出すことができない。振り切りたいのに振りきれない、闇がずぶずぶと底なし沼のように僕の足元から包み込んでいくような錯覚を感じながら、どうすることもできずにただ黙っていた。
 ……もしかしたら、そうなのかもしれない。先代は僕よりもはるかにチャクチャルさんとの付き合いが長い、僕よりもずっとあの神様の気持ちを汲み取ることができるのかもしれない。一度そんな思いが湧き上がるともう止められず、次から次に悪いことばかりが頭に浮かんできた。チャクチャルさん、答えてよ。どこにいるのかわからないけど、今すぐここに来て全部否定して。僕の命を助けてもらったのに、そんな相手を恨んだり憎んだりなんて、僕はしたくないよ。お願いだから早く来て、僕が手遅れになる前に。

『……んぁ?おいおい無粋な真似してくれんじゃねえか、一体なんだってんだ?』

 突然先代がベッドの横から立ち上がり、ドアの向こうをじっと見つめる。そんな様子を僕は気にも留めなかったが、そのドアの向こうから叫び声が聞こえてきたときは流石にそうも言ってられなかった。

「……何っ!?」

 自分の声の大きさにようやく目が覚め、当然のごとく誰もいない部屋の中でがばっと起き上がる。全く気が付かないうちに凄い汗をかいて呼吸も荒くなっていたが、部屋の外から何度も物のぶつかるような音とくぐもった悲鳴が断続的に聞こえてくるためそれをぬぐうことすら考えつかなかった。

「大丈夫ですか!?今そっちに……」
「いや、来てはいかん!」

 ドアノブに手をかけた時点で向こう側から聞こえてきたのは、苦痛を帯びながらもきっぱりとした静止の言葉。その迫力に、思わず手を離して1歩退く。また魔法を使ったらしく、内側からしか閉められないはずの鍵がゆっくりと回ってロックされるのが薄暗い部屋の中でも見えた。

「いいかね、よく聞きなさい。この森を抜けたら、南西の方角に向けてまっすぐ進むのだ。私の記憶通りの場所に今も拠点を構えているのなら、徒歩で1日の位置にフリード軍の非戦闘員たちの街があるはずだ。そこに行き、匿ってもらいなさい。そしてこう伝えるのだ、辺境の大賢者はすでに死んだと」
「死んだ?一体何を……!」
「説明している暇はない、早く逃げるのだ!君のためだけではない、私自身のためにも!私は敗れた、すでに時間はなイ……!」

 その言葉を最後に、急に老人の口調が変わる。声そのものは本人の物で間違いないが、そこに宿った意思だけが別の存在に入れ替わったような……まるで悪魔の
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ