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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十三話 休息の陰で
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敵の指揮官、シュターデン大将、そしてラートブルフ男爵、シェッツラー子爵はいずれも捕虜となっています。彼らは明日にはオーディンへ護送されてくるでしょう」

「三万の敵はヴァレンシュタイン司令長官の前にあっけなく溶けましたな」

「……」
エーレンベルク元帥だけではない、シュタインホフ元帥までもが声を弾ませている。

「閣下、如何されました。余り嬉しそうではありませんが」
私が沈黙している事に不審を抱いたのだろう。エーレンベルク元帥がシュタインホフ元帥と顔を見合わせながら聞いてきた。

「そんな事は無い、だがの、あれはもう少し何とかならんか」
「?」
「こうまで圧勝するなら今少し自信のある言葉を言っても良かろう。“まあ、何とかなるでしょう”などと言わんでも……」

エーレンベルク、シュタインホフ両元帥が顔を見合わせ苦笑した。
「笑い事ではないわ。もし敵が攻め寄せたら陛下の御身をどうやってお守りするか、必死で考えておったのじゃぞ。それなのに終わってみれば完勝ではないか、あの苦労はなんじゃったのか……」

「お気持は分かりますが、まあ大言壮語した上で敗れるよりはましでしょう」
「軍務尚書の言う通りです。元々ヴァレンシュタイン元帥は大言壮語は吐きませんからな。あれでも努力したほうです」

軍務尚書と統帥本部総長の二人が口々にヴァレンシュタインを弁護する。
「分っておる、本心で言っておるわけではない、ただの愚痴じゃ。それでヴァレンシュタインはこの後どうすると言っておる」

「レンテンベルク要塞を落とすそうです。落とした後は其処を討伐軍の拠点として利用する事になります。ヴァレンシュタインは其処で療養しながら討伐軍全体の動きを見ることになるでしょう」

「軍務尚書の御意見に付け加えさせていただきますとレンテンベルク要塞はオーディンからも遠く有りません。あそこにヴァレンシュタイン司令長官が居るとなれば、貴族連合軍も滅多な事でオーディンには近づけないはずです」

なるほど、ヴァレンシュタインがレンテンベルクに居ればオーディンの反逆者どもも滅多な事では動けんか。ラートブルフ男爵が捕虜になったと言うし、好都合じゃの。

そろそろ例の件も取り掛かるとするか。良い土産を寄越すではないか、ヴァレンシュタイン。気が利くの。ローエングラム伯も間も無く辺境星域に着く筈じゃ。武勲を余り挙げられては面白くない、潮時じゃ……。

「例の件じゃが、そろそろ取り掛かるつもりじゃ」
私の言葉にエーレンベルク、シュタインホフが顔を見合わせた。
「不満かの」

「いえ、よろしいかと思います。幸いラートブルフ男爵が捕虜になりました。少なくともこれで内務省は押さえられるでしょう。問題は有りません」
「同感ですな」
エーレンベルク、シュタイン
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