EPISODE04勇者V
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」
しかし、大陸のボウリングは、凱が思っているような単純な道楽ではなかった。
鋼の玉を転がして全てのピンを打ち倒す単純なルールだと思っていた。が――
なぜかボウルが自走式の玉鋼だったり壁伝いを奔ったり爆発したりと意味不明な規則が盛り込まれ、もはやボウリングとは次元がかけ離れていた。
「やだ!なにこれすっごく面白い!!」
初めて体験する為だったのか、彼女は大いにはしゃいでいた。
凱の世界でいう、いわゆるストライクを連発しているから、気分はとても爽快だった。
隣の凱は、彼女がストライクを出す度に起きる爆発に巻き込まれていた。
こんなのボウリングじゃない。
娯楽が終わればお昼である。お昼といえば最高の喜び、即ち「食」へと移行する。片っ端から店を食べ歩いていく最中、凱は女性の食欲に目が釘付けになった。
「すげぇよく食うなぁ」
「ふぁっふぇ、ふぁんふぉふぇんふぉう。ね♪」
頬張ったままなので、それ以上何を言っているのかよく分からなかった。
目の前の女性は、間違いなく命に引けをとらない食欲を持ち合わせていた。凱の方が先に胃袋を満たされ、逆に頬張りつづけるのは女性の方だった。
もちろん、持ち合わせは凱が担い、伝票を見た瞬間、凱は倒れたくなった。
市長から支給された有り金は、この瞬間羽を生やして空を飛ぶ事となる。
彼女の懐が膨らむ代わりに、凱の懐は一層寂しくなった。
「あー面白かった!」
あらゆるお店を踏破しつくした二人の頭上には、いつのまにか、ぼんやり輝く天体が浮かんでいた。
満月である。すっかり夜も更けているせいか、人ごみあふれた昼間とは景色が180変容し、妙な静けさが漂っている。
今頃は自衛騎士団が盗賊団討伐の遠征から帰還している頃だろう。
自分も今から役所に戻ってセシリー達からの報告を聞かなければ、と思い、空を見上げた時。
「……一日が終わっちゃったね……」
「そうだな」
何故か彼女の横顔は、とても寂しそうに見えた。
「あたしね、一度でいいから都市の中を自由に歩いたり、遊んでみたりしてみたかったの」
普通の女の子のように。そう呟く彼女の横顔はより一層寂しく見えた。
栗色の長い髪が、月の光で輝いて見える。
昼間に垣間見えた活発な姿とは対照的に変わり、今度は鳥肌の立つ美しさと仕草を見せた。
「今日は一日ありがとう」
無理矢理付き合わされた割には、悪い気持はしなかった。それに加え、改めてお礼を言われたから凱の心は大いにストライクされた。
「なあ、名前……」
「ん?」
「君の名前を教えてくれよ。俺は凱」
「あたしの……名前?」
「また遊びに出かけようぜ」
素直で真っ直ぐな凱の言葉に、彼
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