激昂のエメラルド
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らになりながらも寄ってきたジュカインに気付いて、我に返る。
「……へっ、当然だろ」
憎まれ口を叩くのは、変わらない。それでもその声の調子は、いつもの傲慢で不遜な彼に戻っていた。
「良かったら、なんであんなに焦ってたのか教えてくれないか?」
「けっ、そんなに知りたきゃ教えてやるよ……俺はな、知っての通り金持ちの息子だ。だがそれは何もいいことばっかりじゃねえ。自由に金を使える代わり、将来のためにやらなきゃいけねえことがある。俺の本当の意味で自由な時間は、そんなにねえ」
一から十まで説明する気はないのだろう。大分端折った説明だが、なんとかついていく。
「俺がトレーナーとして大成するにはただ強いってだけじゃダメなんだ。親父みたいな企業家並の金を稼げるトレーナーにならなきゃいけねえのさ。その為に、チャンピオンの地位がいる」
チャンピオンになるのは、目的ではなく手段。しかも彼はシリアについてある秘密を知っている。だからこそ、彼と同じではいけないのだ。
「……シリアの真似なんかしてるやつに負けちゃダメだって言ってたよな。あれは?」
「……」
それについて聞かれて、エメラルドは黙った。自分の知る事実をサファイアたちに話すかどうか考える。結論は。
「さあな、本人に会うか何かして聞けよ。その方がお前も納得できるだろ」
「……わかった」
エメラルドは愛用のマッハ自転車をバッグから取り出し、展開する。そしてマッハ自転車に跨った。
「じゃあな。俺はもう行くぜ。むしゃくしゃは収まったが、やっぱりてめえらと旅するのは御免だ」
「ッ……わかったよ」
負けたサファイアにそれを止める権利はない。だが、何もせず見送る気はなかった。
「ただ……こいつを連れていってくれ。元はお前のポケモンだ」
「こいつは……メタング」
受け取ったエメラルドが不思議そうな顔をする。何故俺に、目線で訴えた。
「元はお前のポケモンだし、メタングが雑魚なんかじゃないってのはお前もよくわかっただろ。そいつはもっともっと強くなれる。だから、連れていってくれ」
「ちっ……しょうがねえな。俺様の足引っ張るんじゃねえぞ」
その舌打ちは、なんだかバトルする前よりもとても軽くサファイアには聞こえた。もう彼がダンバル――メタングを蔑むことはないだろう。
「それじゃあ……じゃあな」
「ああ、お前の事情は少しだけわかったけど……あんまり、急ぎ過ぎるなよ。ポケモンのことも、お前自身のこともさ」
「はっ、そんなことてめえの心配することじゃねえっつーの」
エメラルドが自転車を漕ぎ出し、カイナシティを走っていく。ほどなくして彼の姿は見えなくなった。
「
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