外伝
第裏幕『The.day.of.Felix』
[1/8]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
独立交易都市ハウスマンからすると南西に位置する帝国の遥か西に、ジスタート王国やブリューヌ王国が存在する。
存在するのだが、人々がその名を知るのは文献や噂話程度でしか仕入れていない。
まるで両者の大陸の国交を遮断するような、複雑な自然環境が隔離施設のように、外界を作っている。
分厚い雲を貫くかのように、成層圏にまでそびえ立つ山々。
極寒と灼熱を表裏一体させたかのような地脈。
低気圧と高気圧の乱気流が、大気と空間ごと薙ぎ払う。
そんな人智を超越した領域を超えて、新大陸へいけたのは――
――独立交易都市の建都市者、初代ハウスマン――
――ジスタート王国、封妖の裂空が主、虚影の幻姫、ヴァレンティナ=グリンカ=エステス――
――独立交易都市、『元』三番街自衛騎士団所属、ヴィッサリオン――
――同じく独立交易都市、『元』郊外調査騎士団所属、獅子王凱――
この4人だけだった。
その内の一人、獅子王凱は第二次代理契約戦争(セカンド・ヴァルバニル)を終結させた後、初代ハウスマンが残した謎『黒竜』の謎を追い求めて遥か西の大陸にやってきた。
ジスタート王国の公国、ルヴーシュかオステローデにまず立ち寄ろうかと思いきや、ヴォージュ山脈を通り越してブリューヌの領地に出てしまった。
ブレア火山を経由して、地面の下を極端な短縮航路で行こうとしたのが仇となったようだ。
その時だ。地面からやっとの想いではい出たら、自分がいる場所が後にブリューヌ王国内に存在するアルサスの領地だと判明したのが。
初代ハウスマンの残した資料が、凱の土地勘の助けになっていた。足を踏み入れたことのない緊張や不安がほんのわずかだが凱の判断を鈍らせるのだった。
今、凱は大いなる戦乱の渦中にいる事に気付かない。
ふと、通りすがりの人に肩をぶつけられた。何かを急いでいるようだった。凱と接触して転倒した人物に手を差し伸べる。
「大丈夫ですか?」
「……つっ……こっちこそ、すまなんだ」
「いえ、怪我がなさそうでよかったです」
やがて凱の手をとり、尻餅ついて倒れた人物はゆっくりと立ち上がる。手を取ってふと目線が彼の左手に注がれる。火の鳥『フェニックス』と同じくする伝説上の生き物、獅子『レグヌス』
を模したような篭手が、やけに印象的だった。
「……ボードワン?」「もし、どうかしましたか?」いや、何でもない」
今年で55になる灰色の髭と髪を生やし、ぐんずりとした体形の人物は、目の前の青年の声を聴くなり、親交のある小柄な宰相を思い出した。
「ただ、そなたとは初めて会った気がしないと思っただけじゃ。何かの縁と思って、せめて名前だけでも教えてくれないか?」
そんなにその人と俺の声が似ているのか?瓜二つ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ