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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
外伝
第裏幕『The.day.of.Felix』
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【明朝・ネメクタム・執務室内】





牙をもがれた獅子のように、テナルディエ侯爵の覇気はどこか弱々しかった。
無理もない。自軍はほぼ壊滅。対して相手は無傷という戦果に終われば、誰もが途方にくれるのだろう。
決着がついた次の日に対談が始まり、両者は再びまみえたのだ。

「……貴様の兵士が持っていた弓とやらは、一体どれくらいの距離を飛ぶのだ?」

「そうですね。最低の部類でも5百メートル……いや、こちらの単位では5百アルシンでしたね」

「遥か彼方だな。もはやどのような弓もとどかん」

率直な感想を侯爵は述べた。

「どうでしょうか?我が国の弓を――」

「……しばらく時間をもらいたい」

「私は『ハウスマン』と申します。以後、お見知りおきを――」

そういって、ハウスマンは彼の執務室を後にした。

一人残されたフェリックス=ア−ロン=テナルディエは、心の整理が出来ないまま、立ち尽くすままであった。



【???】



その日、ドレガヴァクは早々に屋敷を出立し、ある場所へ足を運んでいた。

「予想より早かったな。カヴァクなる使者がブリューヌに来ようとは……」

「急いできたよ。『銃』が近くまで来ているって聞いたから」

「着たかヴォジャノーイ。面白い事態だ。あのハウスマンがブリューヌに来ておったわ」

「ハァ「銃」に続いて珍客が絶えないね」

「さてヴォジャノーイ。お前に仕事を依頼したい」

「どこで何をすればいい?」

「アルサスだ」

中肉中背の若者は頭の中に地図を描く。平面上ではさほど遠くないのだが、実寸距離で考えればかなり遠く感じる。

「……シュッチョーか。かったるいなぁ」

どこか捨て鉢に答えるヴォジャノーイ。

「異界の言葉を使うでない。それで依頼の内容だが……」

――それから両者は、依頼の詳細を確認し終えていくと――

「さて、コシチェイはどう出るかな?」

奴も期待しているはずだ。

――カヴァクなる文明を踏み荒らす『獅子王―レグヌス』の存在を――

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