外伝
第裏幕『The.day.of.Felix』
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が届く前に、すでに勝敗は決していた!
敵は無傷!騎士は全滅!生存者など有り得ない!
時は半刻もたっていない!ただ、騎士はこれで引き下がらなかった。
――夜襲ならあるいは!――
今宵は満月。初戦の敗北を心に引き釣りながら、テナルディエは一人のローブを被った老人と話をしていた。
「上出来なものを連れてきたようだな。ドレガヴァク」
「時間を要した分だけ、質と量を高めた次第です」
「万が一という時を想定して正解だった。かの竜なら、食い殺すことも可能だろうな」
「それほどの敵なのですか?閣下」
「あのようなもの、戦ではない。いかなる呪術を使ったか知らないが、騎士の甲冑を貫くとしても、竜を貫くことなど出来ないはずだ」
地竜が7頭。飛竜が5頭。火竜が3頭。双頭竜が2頭。
竜は本来、人目につかないように住み分けする修正がある。それを鑑みれば、この竜軍団は大奮発といえよう。
そうしなければならない程、今のテナルディエ侯爵には余裕もないし、追い詰められているのだ。
この闇の衣に乗じて奇襲をかける。奴らは騎士を捕えることなどできず、撃破できるはず……と思われた。
竜を盾にするような陣形で前に進む。これは、前回の戦いで得た教訓をもとにしているためだ。
正体不明の鉛の玉に最大限警戒しなければならない。その為には、鉄よりも固いと言われる鱗をもつ竜を先行させなければならない。
――次の瞬間――
――突然、紅い光の砲弾が、流星のように降り注いだ!――
地竜、飛竜、火竜、双頭竜をことごとく貫く!
鉄よりも固い伝説の鱗が、羊皮紙のように引き裂かれていく!
火炎袋を貫通された火竜などは、自らの内部器官に引火して燃焼される!
特にひときわ獰猛で知られている双頭竜が瞬きする間もなく1匹、2匹と落とされていく!
絶命の断末魔も空しく、食物連鎖の頂点に立つ竜でさえ地に伏せる始末!
竜の群れが蹂躙される光景など、人間にしてみれば有り得ない光景だ!
人とは……竜とは……ヤツの言う『我が国の弓』の前ではかくも無力なのだろうか?
数十年の時をかけて培った武術、戦術、技術が等しく無価値に変えていく!
形容しがたい光景。人と馬と竜の躯が戦場に埋まるのは、それほど時間がかからなかった。
「……ふざけるな……」
そう力なくつぶやいたのは、テナルディエ侯爵だ。
「ふざけるな!!こんなものが『弓』であってたまるか!!!」
テナルディエ侯爵のその言葉は、ただ空しく戦場に響くばかりだった。今まで強者の立場でいた彼が、生まれて初めて「弱者」の立場になったのだ
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