外伝
第裏幕『The.day.of.Felix』
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――
――父上?――
――戦いにおいて勝敗を決めるのは『間合い』を置いて他ならない。剣から槍へ、武器は勝敗を決める為に進化を続けてきた。弓はその先にある――
――……――
息子は、それ以上父に向って何も言えなかった。理由はいたって単純、まさに正論だったからだ。
間合いが遠い。それは、近接の剣が中距離の槍に対して不利になるのは自明の理と言える。武器の進化は徐々に間合いを突き放すことで、その武器は最強の座を獲得していったからだ。
――カヴァクなる敵が訪れる時まで、この命が持てばと思ったのだが――
『カヴァク』なる敵。初めて聞く単語に、フェリックスは言い知れぬ不安を抱いて、それとなく訪ねてきた。
――カヴァクなる敵?カヴァクなる敵とは何なのですか?父上――
しかし、超常の知識を持つ父は、首を横に振るだけだった。
――今はまだ教えられん。ブリューヌの子ら、いや、ジスタートやザクスタンの小僧共が『カヴァク』なる敵を知り受け入れるには、まだ奴らは幼すぎる――
再び、父は顔を天井に上げる。何度も同じ動作を繰り返す。そして、誰にも聞き取れないような、枯れ細った声でつぶやく。
――ジスタート王国に伝わる、超常現象を引き起こす竜具――
――いつの時代か、竜具でさえ太刀打ちできない時代が必ず訪れる――
――その時代が訪れる為に、世界は多くの血と犠牲を要求する――
――竜の口から吐かれた鉛の玉は、鉄よりも固い竜の皮膚をたやすく貫く――
――燃える水は、炎の迷宮を作り上げ――
――地に堕ちた光は、全てを塵芥へと還す――
――女神の意志の代行者、黒き弓を携えし魔弾の王よ――
――生命の意志の体現者、黒き銃を携えし勇者の王よ――
――願わくは、二つの魔弾が一つとなり、大いなる意志を穿つように――
この日の夜、フェリックス=アーロン=テナルディエにすべてを託し、彼は静かに息を引き取った。
――※――※――※――
現代へ戻り、テナルディエ侯爵のとある一室にて
「やあドレガヴァク、久しぶり。今度は何の用かい?」
「来たか、ヴォジャノーイ」
人ならざる名前で呼び合い、お互いを確認する。彼らが見ているものと、人間が感じるものでは違う。
「なに、お前にとって造作もないことだ」
「ふうん?」
「『銃』がブリューヌに足を踏み入れたそうだ」
「!!それは本当かい!?ドレガヴァク!」
目を輝かせた子供のように、中肉中背の男は身を乗り出してきた。
「お前にはそやつの存在を確認してほしい。わしとしたことが、『弓』にばかり気を取られて、肝心なものを忘れとった」
しばらくヴォジャノーイは損得勘定を思案
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