EPISODE01プロローグ
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ると、一人の少女が凱に取り次いだ。
「イラッシャませ!」元気があってよろしい声で、凱は工房の待合室へ案内された。
「あ、ああ」
心の準備ができていなかったのか、女の子の応対に凱は一瞬たじろいだ。
「ルーク!お客さんを連れてきましたよ!」
「客?今日はそんな気分じゃないんだが」
手に何かを以ているらしく、椅子に座っていて何かを眺めていた。本を読んでいたのか。
「ご丁寧にどーもです。隣にいるのが親方の……」
「要件はなんだ?」
さっさと本題に入れと言わんばかりに青年が割って入ってきた。凱も彼に対してあまりいい印象は持ち難くなる。
面倒な用事はさっさと片付けたいと思われている。気を再度取り直して、凱は要件を告げた。
「実は……これを修理してほしいんだけど」
そう言って、圧布に包んでいた翆碧のナイフを青年に差し出す。ひび割れたナイフを見た時、青年はあらゆる角度からナイフの症状を診断する。
「芯が折れている。修理不可能だ」
診断結果。NGが出た。
この結果は半分予想していた範疇だから、凱もそれほど残念そうに思っていなかった。むしろ、中世期レベルの文明で、超文明の獅子から受けた恩恵の短剣を修理しろというのが無理というもの。
少し悪いことをしたなと、凱は心の中で謝罪していると――青年の瞳は小さな輝きを取り戻し、まじまじと短剣を覗き込んでいた。
「珍しい金属で作られているな。それにこのナイフ、実用品じゃない。戦闘を想定して
作られている」
「どうして分かったんだ?まだ何も言っていないのに」
「刃の構造を見れば大体わかる。切込みから剣先にかけて標的を抉るように刃筋が流れている。実用品ならこれほど鋭い刃筋なんて必要ない。ただ……」
「ただ?……」
「この金属……おそらく地上にはない物質でできているのか?あんた、この短剣をどこで手に入れた?」
困ったな。どう説明したらいいものか。まさか「異世界から来たんだぜ」なんて言えないし、言ったところで信じてもらえるかどうかだ。とりあえず適当なことを言ってその場を凌いでみた。
「これはウィルナイフと言って、俺の家宝なんだ。先祖代々受け継がれてきたものだか
ら、どこで手に入れたかなんて詳しいことは分からない」
「玉鋼……ではないな。柄治めも、研ぎも、どれも大陸に存在しないものばかりだ。」
「ウィルナイフと仰いましたよね。一体どこで見つけたんデスカ?」
弟子と親方、二人はこれまで拝見したことのない深緑の刃に無我夢中。完全に取り残された青年は、短剣を取り囲む二人に横やりを入れた。
「なぁ、悪いけど、そろそろ返してくれないか?」
「あっ!すみません!すぐお返しします!」
そう言うと、弟子はパ
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