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神剣の刀鍛冶
EPISODE01プロローグ
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り抜いてきた勇者も、今ではただの流浪人青年でしかなかった。
多忙な生活を送るようになってから数日、凱の耳にある噂が飛び込んでくる。
凱は街の隅々まで散策し、掲示板の広告を読み解いていた。すると、日雇い形式の仕事を発見する。
それから凱は、ある程度金銭がたまるまで、あらゆる仕事をこなしていった。土木関係しかり、酒場のような接客関係しかり、引越事業しかり、馬車の交通整理といった、多種に渡る仕事をしていった。独自の雰囲気と、凱が生来もつ親和性と風貌も相まって、見かける市民達からは「ガイさんじゃないか」「ガイ兄」「よ!ガイ」と言われるほど親しまれていた。
各方面の市民から顔を覚えられるほどにまでなった頃――

「これは……自衛騎士団団員募集の広告か」

独立交易都市治安自警集団。各街を自衛する騎士団の総称だ。その騎士団が急募の広告を堂々と見せつけている。
職務質問された凱にとって、あまりいい印象が残っていない。しかし、今の凱にとって、自衛騎士団の待遇はとてつもなく破格なものとなっている。
色々と考えながらも、凱は自衛騎士団入団を希望し、そして採用される。新顔である凱は騎士団の先輩たちの目の敵にもされやすかった。
その理由としては、市長であるヒューゴー=ハウスマンや、凱の所属先の上司である3番街自衛騎士団団長ハンニバル=クエイサーにえらく気に入られているからである。
早い話が、凱とその双方に不満を抱いている。
どうして新参者がちやほやされる?
入団した同期生からはともかく、先輩達からの悪意に近い矛先を感じたのは明らかだった。
しばらくの間、凱に対する嫌がらせの日々は続いた。
それからというのも、とりわけ凱は嫌がらせに対する反撃も考えず、ひたすらこの世界の情報収集に没頭した。凱自身はいつかは元の世界へ戻らねばならない。だからこういう事には執着しようと思わなかった。
幸い、この自衛騎士団公務役支部所にも、図書館なる施設が存在していた。
独立交易都市の文字を一文字ずつ解読、学習し、一通りの読み書きができるようになったとき、ある書物の見出しに凱の目が留まる。

「神剣の刀鍛冶?」

凱にとってもすでに聞きなれた故郷の言葉を、なぜか印象深くつぶやいた。気が付くと、自然と手がその本に伸びていた。

「あら、ガイじゃない。どうしたの?」

「パティ。いや、少し調べものをしようと思って」

気が付けば、隣にパティがいた。以前、傷だらけの凱を祈祷契約なる技術で治療してくれた女性だ。
凱の言う調べものというのは、手元にある翆碧の短刀ウィルナイフをどうにかして修理できないか?というものだ。

「ガイには悪いけど……多分修理は無理かもしれないわよ」

「やっぱりそう思うか?」

「私も鍛冶についてはあまり詳しくないけど……
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