第10話『民を護る為に〜ティグルの新たなる出発』
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の取っ手部をかけようとしたとき――声が聞こえてきた。第一声は整った女性の声だ。
「それではティグルヴルムド卿。我が国の国王陛下の御名を性格に述べてください」
「ええと……ヴィクター=エンター……違った。ヴィクトール=アルトゥール……」
会社の名前を述べてどうすんだよと内心突っ込みたかった凱。声の様子からしてこってり講義をされているみたいだ。どうもそれ以上、国王の名前が思い出せないらしい。
正式御名はヴィクトール=アルトゥール=ヴォルク=エステス=ツァー=ジスタート。このすごく長い名前くらいは凱も知っていた。
ロシア人の名前には、父称といって父親の名前が含まれているように、ジスタートの王族や貴族も祖父称といって祖父の名前が含まれている。親子関係を調べるにはとても便利と知れば、ティグルももう少し覚えやすくなるかもしれないが……
教師と教え子の関係はルーリックの言う通り、凱も見ていて微笑ましいものがあった。しかし、今は客を待たせているので、講義が終わるのを待つわけにはいかないし、ティグルに助け船を出す意味で扉をノックした。
「空いています。どうぞ」
そうリムの了承を確認して、凱は入室する。
早速手短に要件を伝える。栗色の長髪の青年を見たら、ティグルは少し胸をなでおろした。
「戦姫様の急使が来ている。ティグルとリムアリーシャ様に用だとさ。何か渡したいものがあるみたいだ」
「エレンが俺とリムに?」
ティグルの疑問符に反応したリムは一時的に講義を切り上げる。目先の要件を片付けることを優先した。
「休憩にしましょう。ガイさん、私とティグルヴルムド卿はエレオノーラ様の急使にお会いしてきます」
要件を手早くすませたティグルとリムアリーシャは身支度を始めていた。何処へ行くんだと凱が訪ねると、ティグルは内容を記された紙切れを凱に手渡した。文字を見た時、凱は思わず眉を潜めた。
「今すぐキキーモラの館へ来い……読めなくはないが、随分とひどい字だな」
くすんだ赤い若者も、長髪の青年に同意した。先ほど文字の読み書きをしていた凱にとって、この偶然の重なりは皮肉すぎる。
「面目ありません」なぜかリムがこの場にいない主に変わって謝罪していた。
「キキーモラの館ってどこにあるんだ?」
ティグルの問いにリムは口頭で説明する。ちょうど凱もそれを聞きたかったところだ。
「ヴォージュ山脈を抜けた先にある、エレオノーラ様の別荘です」
「どうしてそんな所を待ち合わせ場所に選んだんだろう?」
ふと浮かんだティグルの疑問に、凱は捕捉を付けた。
「多分……何かあったとき、どちらの事態にも対応できるようにする為じゃないのか?ジスタート介入の件で彼女の公国もゴタゴタしてると思うし、正直アルサスの様
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