第10話『民を護る為に〜ティグルの新たなる出発』
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目の前にいる子供くらいになっているだろうか?
そんな凱の感傷を撫でるように、一人の子供が「にぱー」っと笑顔を浮かべ凱に呼びかけた。
「ガイに―ちゃん。できた!」
「おっ!早いな。どれ、見せてごらん?」
凱が子供の計算過程を記した「地面」に顔を覗き込ませる。これは、紙という貴重な物資を消費させないためだ。
青年にとって当たり前のように存在する紙は、この大陸にとって大変な貴重品だ。近世代のように物資感覚を間違えてはならない。
子どもの回答を確認すると、凱は頬をほころばせた。計算ができたり、読み書きができるようになると、無邪気な笑顔を凱に振り撒くのだ。子供たちの緩やかな顔の花壇を見ると、凱も笑顔で応えたくなってくる。
久しぶりに眺めた平和な光景に、仕事をひと段落させたティッタが覗き込んできた。
「ガイさんって学士様だったのですか?」
不思議な表情で、ティッタは聞いた。ひょこりと傾げた仕草が、子どものようにどこか愛らしかった。
羅列のように書かれている筆算を見て、ティッタの好奇心に灯りがともった。
「いや?流浪者やってるうちに、色々と身についたみたいなんだ。学士様なんてそんな偉い肩書はもってないよ」
そう凱が遠慮しがちに言う。
他の子供もどうやら回答が出来たようだ。確認作業をしながら、ティッタに話しかける。
「計算の極意はずばり、『できるだけ楽な方法』と『間違えにくい方法』に絞ることだよ。頭の中で計算する暗算でもこいつは行けるぜ」
1〜9までの数字の概念は、世界が違えど同じ認識で正解だった。それは子供達に教える凱にとって幸いだった。
足し算の場合、桁の多い大きな数字を加算するとき、2桁ずつ計算することで計算速度を上げることが出来る。
引き算の場合、近似する数字を見つけることで、比較的簡単に出来る。整理しやすい数字に整えて、2段階に分けることで失敗を防ぐことができる。
計算の速い子どもは、この方法を知った途端、計算過程を飛ばして答えを直接導いたのだ。これには凱も驚かされた。
「成るほど。そのような計算方法など知りませんでしたよ」
さらに、禿頭の騎士さえも興味深そうに覗き込んできた。それにつられて、ぞろぞろとライトメリッツの駐在兵もやってきた。
なんだか大所帯になってきたぞ。男の比率がハンパじゃない。いつの間にか野郎パラダイスが出来ていた。あまり広くない裏庭では、この人数だと狭く感じる。
「ガイ殿はまるで宣教師みたいですな」
ルーリックに宣教師と言われ、凱は第二次代理契約戦争において邂逅した人物を思い出し、若干暗い影を落とす。
(宣教師か……そういや、あいつも元宣教師って言っていたっけ)
羅轟必砕の極意を会得した神仏
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