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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第9話『戦姫の所作〜竜具を介して心に問う』
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レンティナは口に手を当てて驚いていた。
二人は足並みをそろえて、再び歩き出す。

「でも、大変なのはエレオノーラだけではありませんわ」

それは、光と影の戦姫には分かっていた。
内乱の火種がくすぶっている以上、確実にブリューヌの迷走が始まる。
そして周辺諸国は、その隙を逃さないだろう。

「ヴァレンティナ……あなたは、どうするつもりなの?」

謁見の時に司法席越しに発言したものとは違う、一人の戦姫としての答えをソフィーは求めた。
それを察してか、ヴァレンティナもまた儚げな笑みを浮かべて返事する。

「答えはただ一つ。ジスタートの国益を第一。その中にオステローデがある。そういうことです」

心に重くのしかかるヴァレンティナの言葉を受けて、ソフィーは一人歩みを止めた。
黒髪の戦姫の後姿は、なぜか今にも消えてしまいそうに見えた。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





(シシオウ=ガイ。懐かしい名前。私が殿方に愛称を許したのは、あの方が初めてでしたわ)

ソフィーを一人残して、ヴァレンティナは思い出を噛みしめた。獅子王凱と巡った独立交易都市浪漫譚を。出会いの証として、多目的用通信玉鋼を胸に抱いて――
平たい板をかいつまんで、指で撮影記録を開く。
写真は、凱とヴァレンティナの二人が楽しそうな表情を浮かべていた。

「国民国家《ネイションスティート》……ジスタートが真の理想へと生まれ変わる時、あの人は私の隣にいてくれるかしら……」

誰もいない空間で、ティナは再び儚い表情を浮かべて空を見やる。それは決して、戦姫や公主といった立場に縛られないままの、年相応の女性の儚さがあった。





『アルサス・中央都市セレスタ・ヴォルンの屋敷・裏敷地』





――さて、ジスタ−ト王国において戦姫達の間で、密かに凱の存在が囁かれているとはいざ知らず――

「これ、読める人いるかな?」

「あっ!分かった!ジャガイモだ!」

「ざんねーん。キャベツでした」

「ずるいよガイ兄ちゃん。最初の文字が同じなんて!」

「わりぃ。でも、最初の文字が同じものなんていくらでもあるさ。さあ授業を再開しようぜ」

一人の青年の回答に、一人の小さな子供が頬を膨らませた。ちなみに、他の子供の同じ反応を示していた。
青年は見た目、20代前半(実際は後半)あたり。子供は見た目、10に満たない。
どうしてこのような構図になっているか、理由を述べよう。
現在、アルサスというブリューヌの辺境土地は、ジスタート軍の占領下にある。
占領下にあるという事は、当然駐軍部隊もあるわけで、部隊長組は神殿を貸し切っており、それ以下の兵達は空き家等を利用して夜を明かしている。
他国の、それも見
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