第9話『戦姫の所作〜竜具を介して心に問う』
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っているわ」
「伝言?」
アレクサンドラ=アルシャ―ヴィン。レグニーツァ公国公主の彼女は、エレンにとって多大な恩を受けた相手でもあり、リュドミラとの喧嘩の仲裁、(一度だけ実力行使)を引き受けていた相手でもある。
親友の彼女の言葉となると、二人の戦姫の絡む話題で硬化気味だったエレンは、少しだけ態度を軟化した。
『竜具を介して心に問え』
「竜具……を?」
それからソフィーは一言一句違えることなく続けた。
『例え竜具で心を触れ合えたとしても』
「……心を?」
ソフィーの口調は、まるでサーシャが傍らに立っているかのような錯覚さえ、エレンに覚えさせる。
『竜技に心を呑まれては意味がない』
「心を……呑まれる」
それからエレンは、ソフィーの語る言葉全てを、オウム返しのように繰り返した。一つ一つの言葉を、心に刻みつけるように。
2年近く前、アリファールに選ばれ戦姫になって間もない頃だ。サーシャ竜技の濫用を自戒せよと諭されたのを思い出す。
『戦士なら武具を。戦姫なら竜具を。これはあまねく万物に通ずる理だ』
次々と繰り出される言葉は、なぜか自然とエレンの耳にしみ込んでいく。
――戦姫なら……竜具を交わす――
竜具を向ける相手。竜具を向ける時。竜具を向ける場所が分からない程、エレンはもう子供ではない。
エレンも、ミラも、ソフィーにも、それぞれの国があり、責務があり、使命がある。その為に衝突することがある。
それぞれが、それぞれの大義を背負って――
剣腕が卓越していても、未成熟だった心のままで感情に任せてぶつかり合う2年前の頃とはもう違うのだ。
意見の相違や、立場の見解から仕方なく敵対する戦姫も、過去に何度かあったらしい。そうした戦姫同士の激突事例は枚挙にいとまがない。
再びソフィーは口を開く。
『矜持とは違う、僕たち戦姫の「心」の所作なんだ』
「心の……所作……か」
エレンの視線はアリファールの美しい紅玉に移される。そのつぶやきに呼応するかのように、銀閃は軽やかな風を奏でた。
「これから、必要な時に竜具を交えていくエレンへの……叱咤激励だって言っていたわ」
金色の髪の親友の口を介して伝えられた言葉を心に刻み、エレンはふと自嘲気味の笑みを漏らした。
――そうか。サーシャには結局、全部分かっていたんだな……――
問うように自分を見るソフィーに気づき、エレンは静かに言った。
既にジスタート全公国にブリューヌ内乱の介入の報は浸透している。当然サーシャの耳にも届いている。
黒髪の戦姫もまた、ソフィーと同じように、親友たる二人の行く末の心配を捨てきれないのだろう。
「ソフィー」
「何かしら?エレン」
「2年前、竜
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