第9話『戦姫の所作〜竜具を介して心に問う』
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ティグルに関してはエレンにとっての「捕虜」と、「雇い主」という立場が判明している為、自分に対しての「脅威」ではなく「同等、あるいは味方」として見ている。
だからこそ、立場の確定していない凱の行動がもたらす影響を、エレンは警戒しなければならない。
「戦姫と同等……若しくはそれ以上」
ソフィーは形の整った眉を潜めて、つぶやいた。たおやかな彼女もまた、眠れる獅子の存在に興味を持った。
「そういえば、エレン。今回の監査役は誰か知ってる?」
「二人の内の一人は、わたくし」と、ソフィーは自分に指さした。金色の美しい髪が微かに揺れる。
「あと一人はミラ……リュドミラよ」
エレオノーラとリュドミラの不仲を考慮してなのか、あえて青い髪の戦姫を愛称で呼ばなかった。
「ソフィーなら構わないが……リュドミラを監査になんか私は頼んだ覚えはない」
「エリザヴェータでは不適格だから仕方がないわ」
ソフィーの口から異彩虹瞳《ラズイーリス》が出た時、エレンの感情は負の方に傾いた。
監査役とは、今回のブリューヌ内乱における戦後処理の必要常設機関だ。
選任するにあたって、該当する人物としてエリザヴェータとリュドミラが候補に挙がった。結果、選任されたのはリュドミラの方だった。
公国上の位置関係もあって隣接する方が業務監査に支障のないものの、主な理由は極めて政治的過去の背景によるものだった。
過去に、エリザヴェータとエレンの間に貴族の着服問題が発生した。その着服問題の中心人物となったのはエリザヴェータ……彼女の父ロジオンであった。
その事件に対して、ソフィーも決して無関係ではない。横領と着服に際して被害を被った周辺貴族は、そろってヴィクトール王に告訴した。その王が実態調査を命じたのが、情報収集能力に長ける戦姫、ソフィーだった。
ロジオンの有罪が立証されると、ヴィクトール王は彼の領土に最も近いエレンに討伐命令を下した。その時、父の贖罪と処遇を任せてほしいと願い出たのがエリザヴェータだ。
結果、ロジオンは出廷に応じるどころか、ジスタートからの逃亡を図ろうとした。よって、エレンは彼を追跡、討ち果たして事件は終幕した。
ジスタート国の規定通りに従えば、一時的とはいえ、叛逆者の後見人となったエリザヴェータは監査役に不適役とされた。
リュドミラが選定されたのも、ルリエ家が代々ラヴィアスを受け継ぎ、戦姫の模範としてヴィクトール王への信頼を後押ししたのだろう。
こういう国益重視の考えを持つヴィクトールは実に用意周到であり、リュドミラには不仲故に聞き出せない事と、ソフィーには親密故に聞き出せる事での監査役を講じたのだ。
何かを思い出したのか、ソフィーはポンと両手を合わせて話題を変えた。
「そうだわ。エレン。サーシャから伝言を預か
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