第9話『戦姫の所作〜竜具を介して心に問う』
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ドミラとエリザヴェータだな」
エリザヴェータの公国はリュドミラの公国と違い、ライトメリッツから離れている。厳警戒を取るべき相手は、エレンの公国と隣接しているオルミュッツ公国だ。
警戒すべき戦姫の大将を絞り込めただけでも、エレンには大いに助かった。
「ソフィー。頼みたい事がある」
「戦姫以外に、ブリューヌの情勢に関わる人物を調べてほしいという事?」
「流石だ。実はあと二つ、調べてほしいことがある」
一つは、テナルディエ公爵の間で竜を使役できる者がいないか調べる事。
先日のモルザイム平原での戦いの内容をエレンは「地竜」・「飛竜」と交戦したことをソフィーに話した。実際飛竜の方はティグルの黒弓にて撃墜しているが、戦姫に匹敵するティグルの力を公に出来ないため、2頭ともエレンが打ち倒したことになっている。
「二つ目は……シシオウ=ガイ。この男を調べてほしい」
「シシオウ……ガ……イ?随分と変わった名前ね。できれば、理由を聞いてもいいかしら?」
エレンは事の顛末を出来るだけ詳細に話した。
獅子王凱。ある日、アルサスにふらりと現れて、民を護る為に尽力した青年。
ジスタート軍が介入するまでの間、たった一人で領民を守り抜き、ティグルと邂逅を果たした。
最初に凱と出会ったのがティッタだ。テナルディエ軍撃退後、ひと段落ついてからエレンは凱の事をティッタに聞こうとした。だが、過去や出身等のことについてはティッタも、リムも、ティグルも詳細に聞かされていない。
ただ、「凄く強い」「凄く速い」「凄い剣士」という風潮がアルサスに浸透していると……
あえてこの場では、「不殺」について話さなかった。個人的な感情が表に出てきそうで、押しとどめる自身がなかったからだ。
一騎当千や万不不当とは違う、彼の圧倒的な強さ。私たち戦姫達とは違う強さを、あの青年は持っている。
ひとつの公国を治める立場故か、時代の流れに聡いエレンだからこそ、はっきりと分かることがある。
――あの男が動けば……時代も動く――
強大な力を持つ存在は、時代という大気をうねらせる。そうなれば、当然民衆も大気の流れに巻き込まれ、術もなく時代の渦に飲み込まれる。
眠れる獅子の存在を信じるわけではないが、エレンはなぜかそう思わずにはいられなかった。
「あれほどの戦士なら、ブリューヌやジスタートで既に噂となっているだ。貴族や領主なら、大金を払ってでも抱え込みたいくらいに」
「そんなに凄い人なの?その……シシオウ=ガイってひとは」
「私の見立てでは、単純な戦力なら戦姫と同等かもしれん。私も断片的にしか耳にしていないから、私もここまでしか分からない」
戦姫と同等の力を持つという意味ならティグルも同じだ。正確には、彼の持つ黒き弓の力を指している。
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