第9話『戦姫の所作〜竜具を介して心に問う』
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うな魚が水を定位置に噴き上げて薄い水のカーテンを作り、吹き抜けの天井から差し伸べる太陽の光が虹を彩り、人の姿を隠してくれる。二重構造の防視機能と、水の音が生み出す防諜設備がある為、密会としては手軽に利用されている。ソフィーから後で教えられることとなるが、この噴水設備はいわば、「遮蔽建造物」と言うらしい。
ソフィーにとって、エレンは戦姫になったときからの友人だ。先ほど別れたミラもそう。心の友として二人に友愛を注ぐ共通の友人として、今後の二人の行く末が心配でならないはずだ。
だから、ソフィーはブリューヌとジスタートに関する情報を、エレンに全て話そうと決意した。
早速エレンは深々と頭を下げた。
「ありがとうソフィー。本来なら私が始末をつけなければならないところを、口添えしてくれて申し訳ない」
公国を敵視しているのか、それとも戦姫に敵対しているのか分からない。あるいはその両方かもしれない。
ジスタートの王宮に足を踏み入れた時、既にわかっていたことだ。あまねく謀略が渦を巻いていたことに。だからこそ、エレンはソフィーの弁護に感謝の意を示した。
「ミラの言う通り、ぼろ程度ですまなかったと思うわ。もちろん、私もね」
エレンの顔に隠しきれない驚きの色が浮かんだ。だが、ソフィーはエレンを驚かせる為に、このような自嘲ぎみな事を言ったわけではない。
二人とも用意した果汁水を一口飲み、ソフィーは前置き無く切り出した。
「エリザヴェータは……テナルディエ公爵、ガヌロン公爵と深い交流があるわ。ただし、儀礼上の付き合いね」
僅かに眉を潜ませるエレンだが、次を促した。風姫は異彩虹瞳の戦姫に対しての個人的感情を、この場では押し殺した。
「ヴァレンティナに関しては……ごめんなさい。今は何もわかっていないの。彼女の事は調べてみるわ」
虚影の幻姫は未だに謎が多い。ソフィーが警戒しているためなのか、彼女はソフィーを警戒している。肝心な出所の尻尾を掴ませないあたり、流石は女狐といったところだろう。
「オルガは行方不明。竜具だけ持ち出して、――旅に出る――と書き残して姿を消したわ」
「行方不明?」
思わぬ単語に、エレンはオウム返しのようにつぶやいた。だが、驚いている暇はない。ブレストの公主の現状が分かっただけでも良しとしよう。
そして、エレンは口調を緩めて、最も気にしている戦姫の状況を聞いた。
「……サーシャの具合は相変わらずか」
「良くはなっていないわ。でも悪くなってもいないみたいね。わたくしがジスタートへ来る直前の話だけど」
エレンを安心させる為とはいえ、このような言い方しかできないソフィーは、自分を情けなく思った。
「当面警戒すべきはリュ
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