旅立ちは彼を目指して
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、思わずその体を身震いさせた。ガタガタと震えて、口から放つ粉雪が止まりそうになる。
これが、サファイアとカゲボウズがチャンピオンの真似をしながらトレーニングをしているうちに生み出した『必殺技』。自分を大きく見せて相手を驚かせるナイトヘッドを、影分身にも使うことで威力を高めたのだ。
決まった、とサファイアは確信する。だが、それは実戦においては甘かった。覆面の男がすぐさま命じる。
「ユキワラシ、目を閉じるべきだ!そうすれば何も恐れることはない!粉雪を放ち続けるのだー!」
「なっ……!?カゲボウズ、避けろ!」
瞳を閉じたものに影法師は効果がない。ユキワラシが目を閉じ、恐怖から解放されて再び粉雪を打ち続ける。だがその狙いは滅茶苦茶だ。目を閉じているのだから当たり前だが。その攻撃はカゲボウズもサファイアも捉えず、ただ周りの空間を冷やしていく。
「何のつもりだ……カゲボウズ、だましうちだ!目を閉じているなら、直接攻撃するしかない!」
そう命じ、カゲボウズが目を閉じているユキワラシの後ろから角で突いたり負の感情をぶつけて攻撃するが、目を閉じているがむしゃらに打つだけの相手は騙しようがない。純粋な直接攻撃にまだ乏しいカゲボウズは、ちまちまとダメージを与えるしかなかった。
「ふははっ、さっきまでの威勢はどうしたのだ?さあ、大人しくよこすべき!」
「うるさい!お前こそ俺のカゲボウズに難のダメージも与えられてないじゃないか?これ以上やっても、お前のポケモンが傷つくだけだろ!」
「くくく……それはどうかな?」
「何を言って……」
その時。ぐらり、とサファイアの体が傾いた。慌てて体勢を立て直すがいつの間にか、頭がぼんやりとしている。
(なんだ、これ?)
見れば、カゲボウズの攻める動きもだんだんと鈍くなっていた。粉雪は一度も直撃していないはずだ。それなのになぜ……と困惑する。
それを見て、覆面の男は最初の勢いを取り戻したように勝ち誇る。
「幼い少年に教えてやろう……君と君のポケモンは今、我がユキワラシの『冷気』に苦しめられているのだ!」
サファイアは改めて周りを見渡して、気づく。温暖なはずの101番道路が、まるで雪国のように雪が積もり、冷気は肌を突き刺すような痛みとなっている。今まで気づかなかったのは、目の前の敵に集中していたからにすぎなかった。だが体が限界を迎えて意識の混濁という症状が現れ始めたのだ。
「どうする?大人しく渡さないと、凍え死んでしまうぞ?さあ……珍しいポケモンを渡すべき!」
言い返す余裕がない。これが実戦。自分がチャンピオンに憧れ、努力をして掴んだ必殺技はあまりもあっけなく破られた。そのショックに、目の前が真っ暗になりそうになる。
(…
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