巻ノ六十一 姫武将との戦いその三
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「よいかもな」
「では」
「甲斐姫を何とか城から出すか」
「そうしましょう」
「出ぬ場合は」
「はい、その時はです」
幸村はさらに言った。
「我等が忍の術を使い」
「そしてか」
「城を攻めまする」
そうするというのだ。
「夜に城に忍び込み」
「攻めるか」
「そうします」
「そうするか、しかしじゃ」
ここで浅野は幸村にさらに言った。
「それは危険じゃ」
「城内に忍び込むことは」
「それは首を縦に振れぬ」
「左様ですか」
「危険が大きい」
城に忍び込む者達にとってというのだ。
「だからな」
「それは、ですな」
「出来ぬ、それをする位なら」
ここで浅野が言う策はというと。
「兵糧攻めの方がいい」
「その方がですか」
「時間がかかってもな」
「そうされますか」
「そう考えておるが」
「いや、兵糧攻めよりもじゃ」
ここで言ったのは石田だった、彼が言うにはだ。
「他の攻め方の方がよい」
「鳥取城の様になるからか」
「あれで確かに城は陥ちたが」
しかしとだ、石田は難しい顔で言うのだった。そこには彼のいくさ人であるがそれと共に別の一面も見えていた。
「しかしな」
「餓えた者達がか」
「あまりに気の毒だった」
だからというのだ。
「あれはせぬ方がよい」
「だからか」
「うむ、兵糧攻めで餓えさせるよりな」
「一気に攻めてか」
「降した方がよい」
餓えさせ苦しませつつ死なせるよりはというのだ。
「むしろな」
「御主は相変わらず甘いな」
浅野は石田の話を聞き少し呆れつつ言った。
「兵糧攻めは確かな効果があるぞ」
「それはわかっておるが」
「それでもか」
「そうじゃ、御主は無闇に人を死なせるのが嫌いじゃな」
「嫌いじゃ」
石田ははっきりとだ、浅野に答えた。
「戦で人が死ぬのは当然にしてもじゃ」
「死ぬ者は最低限でよい」
「そうじゃ」
まさにというのだ。
「だからじゃ」
「そう言うのか」
「うむ、兵糧攻めは最後の手段じゃ」
否定しないがそれでもというのだ。
「最後にしてじゃ」
「そのうえでか」
「攻めようぞ」
「では忍び込むことと兵糧攻めはか」
「最後じゃ」
最後の最後とだ、石田は浅野に再び言った。
「そうしようぞ」
「わかった、ではな」
浅野は石田がそう簡単には引くことをしないと知っていた、それでこの時も結局は頷いたのだった。そしてだった。
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