暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十一話 ファーストストライク
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


戦闘開始から二時間が過ぎた。素人の私から見ても味方が一方的に攻撃している事が判る。ワルトハイム参謀長、シューマッハ副参謀長、ジークフリード・キルヒアイスが戦況を見ながら指示を出している。

今手持ち無沙汰にしているのは私とリューネブルク中将だけだ。中将はつい先程まで司令長官と会話をしていたが、今は指示を出している参謀長達を見ている。合格点を付けられるか見ているのかもしれない。

提督席に座っている司令長官を見た。司令長官は黙って戦況を見ている。彼は戦闘開始から一時間が過ぎた時点で指揮をワルトハイム参謀長達に任せた。経験を積ませようというのか、それとも指揮を執るのが辛いのか……。

ワルトハイム参謀長達が優位に進む戦況に興奮気味なのに比べ司令長官は冷静そのものだ。時折顔を顰めるときが有る、傷が痛むのかもしれない。提督席にゆったりと座り、毛布をかけている姿はとても軍人には見えない。

「何か男爵夫人の目を楽しませるものが有りましたか?」
「いえ、済みません。閣下が余りに落ち着いていらっしゃるのでつい見てしまいました」

司令長官の言葉に思わず声が上ずった。彼の視線はいつの間にかスクリーンから私に移っている。私が司令長官を見ているのに気づいていたらしい。思わず頬が熱くなった。司令長官は微かに笑みを浮かべている。

「何か私に聞きたいことが有りますか?」
「よろしいのですか?」
私の問いに司令長官は頷いた。視線はまたスクリーンに向けられている。
「予想より早く戦闘は終わりそうですが、それでも後一時間ほどかかるでしょう。その間はやることがありません」

「男爵夫人、余り長時間は困ります。司令長官を疲れさせないでください、本当ならまだ入院していなければならないんです」
「ピーマンとレバーさえなければもっと入院していても良かったんですけどね」

フィッツシモンズ中佐の心配そうな声に司令長官がからかう様な表情で答えた。ピーマンとレバー? 嫌いなのだろうか。まるで子供みたいだ。思わず笑いが出そうになった。

「閣下、シュターデン大将はこの後どうするでしょう?」
「そうですね、こちらの動きを知ってラートブルフ男爵と合流する事を優先するか、或いは気付かずにこのまま進撃するか……」

「どちらだとお考えです?」
「おそらくはこのまま進撃するでしょうね。そして各個撃破される」
「……」

そうだろうか、いくらなんでもこのまま進撃と言うのはありえないような気がする。私の沈黙をどう受取ったのか、司令長官はスクリーンを見たまま話し始めた。

「シュターデン大将は実戦経験はありますが、実戦指揮の経験はありません。殆どが参謀、幕僚任務のみです。こういう経歴を積み重ねた人には多かれ少なかれある種の癖があるのです」
「癖、です
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ