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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百八十一話 ファーストストライク
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そしてリューネブルクが会議卓に座っている。
眼前のスクリーンにはまだ敵軍は映っていない。しかし戦術コンピュータがモニターに映し出す擬似戦場モデルには敵軍の姿が映っている。シェッツラー子爵率いる九千隻の艦隊だ。このまま行けば敵の斜め前方から攻撃する事になる。
皆緊張している中でリューネブルクだけが戦況よりもキルヒアイスに注意している。ロキに乗艦する前にリューネブルクには例の件を話してある。この戦いの後でシューマッハにも話しておく必要があるだろう。
「参謀長、妨害電波は出ていますか?」
「はっ、特に問題はありません」
「では、そろそろ始めましょうか」
俺の言葉に皆が頷いた。先ずはファーストストライクを取る。俺は胸の痛みを堪え右手を上げ振り下ろす。
「攻撃開始! 急速接近し敵を撃破せよ!」
帝国暦 487年 12月15日 シェッツラー艦隊旗艦メレンバッハ シェッツラー子爵
「敵艦隊急速接近、規模、約一万五千!」
「何の話だ! 敵とはどういうことだ!」
オペレータが敵が近づいていると言っている。馬鹿な、見間違いだろう、敵がこんなところに居るわけが無い。シュターデンは敵はオーディン近郊でこちらを待ち受けていると言ったではないか。三方から包囲して殲滅すると。
スクリーンに映る光点が少しずつ大きくなってくる。あれは、あれは敵なのか……。
「閣下、どうなさいますか?」
部下が問いかけてきたが、どうすればよいのだ? こんな話は聞いていない。シュターデンに騙された、そうだ、シュターデンだ!
「シュターデン大将に連絡だ、応援を要請しろ」
「駄目です、繋がりません」
役立たずのオペレータめ、何故繋がらないのだ!
「どういうことだ、何故繋がらない!」
「敵の妨害電波が酷く通信は不可能です」
「ええい、役立たずめ! 私はどうすれば良いのだ」
何故誰も私を助けようとしない、何故だ! シュターデンに騙された。あの男は私を囮にして自分がオーディンを攻略しようとしているのだ。きっとそうに違いない。自分だけで功を独占しようとしているのだ。
突然スクリーンが真っ白く光った。
「何だ、何が起きた!」
「閣下、敵が攻撃をしてきました、反撃なさいますか、それとも撤退ですか、御命令をください」
「こ、攻撃だ、攻撃せよ、敵を蹴散らすのだ」
「攻撃せよ、全艦、総力戦用意!」
総力戦? 勝てるのか、私は。負けたらどうなるのだ……。
し、死にたくない、まだ死にたくない。降伏すれば助けてもらえるのだろうか……。私はシュターデンに騙されたのだ。そう言えば助けてもらえるのだろうか……。
帝国暦 487年 12月15日 帝国軍総旗艦ロキ マグダレーナ・フォン・ヴェストパーレ
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