第7話『闇の暗殺集団〜七鎖走る!』
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信じられないという表情を浮かべて、凱を見上げた。一途に信じる強い想いが、その瞳にはめ込まれている。若者たちを安心させようと、凱は微笑みを浮かべた。
「そんな目で見るなよ。ティグル、ティッタ。ところで、勇気って何だと思う?」
勇気という意味は、なんとなく直感で理解していたが、いざ正面から問われると、言葉が出てこなくなる。
「怖い気持ちを恐れずに向かう心」
そうティグルが回答した。
「そうさ。勇気ってのは、怖い気持ちを乗り越える強い心の事さ。怖さを知らない奴に、勇気なんて必要ない。だから、決して勇者にはなれない」
最後の方はよくわからなかったが、「そっか……そうなんだ」と二人はつぶやいていた。
(ディナントの戦いの野営の時、マスハス卿も言っていたな。剣や槍を扱えることが、勇気の証明にならないって)
そんな皮肉を、思い出した。
「テナルディエ軍が明日、アルサスに迫ってくる。どうしても怖かった。」
「分かります。あたしも、ティグル様をずっと待ち続ける間は、ずっと怖かったです」
「そうだろうな」
凱はティッタに向けて深くうなずいた。今だ、凱が乗り越えられない強さを、この少女は既に乗り越えてきたのだ。
「ティッタは……俺の戦いをどう思った?」
出来るだけ優しい口調で凱は、ティッタに話しかけた。
アルサス防衛戦の時、多分ヴォルン邸の2階で彼女は見えていたはずだ。
人間を遥かに超えた、力を以て――
「……嬉しかったです。本当だったら、あたしたちとガイさんって、出会うはずがなかった。そして、なんだか心に灯がともったような感じがしました。みんなみんな、強くて優しいガイさんが大好きなんです」
「ありがとな。ティッタ……でも、俺自身、この力が怖いんだ」
ティッタにはとても信じられなかった。どんなに強い相手でも、凱はいつも恐れずに立ち向かっていった。そして、眩しいくらいの笑顔でみんなを安心させていた。
「二人とも、そんな目で見るなよ。ただ……俺自身というより、俺の心に住み着いている獅子王が怖いんだ」
「それって……」
獅子王とは、ブリューヌやジスタートに出てくる、英雄譚等に出てくる伝説上の霊獣である。
数多の動物の頂点に立つ百獣の王である獅子をたたえて言う言葉。また、獅子のように勇ましい王。すなわち、勇者。
だが、かつて十の神々の文明を埋葬したとして、大陸の殆どでは凶兆となぞられている。
今でも、国家の要人を闇へ葬ったという歴史が語られているほど、ブリューヌとジスタートの神官達に、レグヌスは忌み嫌われている。
戦意高揚が、心の檻をこじ開けようとして、凱を凱でいられなくする。
故に、獅子王を孤独にする。
その時、孤独の寂しさ
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