第7話『闇の暗殺集団〜七鎖走る!』
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だか恥ずかしくなった。
「そ、それにしても、狩りをするにはいい日だな。ティッタ」
ティグルは無理矢理誤魔化した。これ以上、ティッタのおもちゃにされたくない。
こういう時、女は男をすぐ子ども扱いしたがる。口元にジャムを残したままという絶好の材料を与えたティグルに非があるわけだが――
「やっといつものティグル様に戻ってくださいましたね」
「あ……いつもの俺と違っていたか?」
「いつものティグル様なら、狩りをするにはいい日だ。ぐらいのことは仰るから……」
ティッタの言葉は、昼寝と狩りを趣味とするティグルがいつも出る口癖だ。
「え……」
自覚していなかったことを指摘され、ティグルは浮かない顔をした。
凱には、やっとティグルの心が抱いているものを理解できた。
◇◇◇◇◇◇◇◇
「ティグルヴルムド卿」
しばらく沈黙が続いたために、凱はくすんだ赤い若者に声を掛けた。
「すみませんガイさん、見苦しいところを見せてしまって……あと、長くて呼びにくかったら、俺の事はティグルでいいです」
改めて紹介する。
そう凱に自分の愛称を許す少年、ティグルヴルムド=ヴォルンという。
凱の見たところ、彼は年相応の普通の少年となんら変わりはない。いや、普通を遥かに超えた、勇気ある少年だ。ディナントの戦いから始まった、常ならざる運命に翻弄されながらも、ティグルは弓一つで領民を守る為に戦ってきた。
だから、凱はこの少年の事を尊敬する貴族として、アルサスを守り抜いた戦友として、ティッタが慕う心優しき領主として、知ることが出来たことを誇りに思っている。
少年が自分から口を開くまで、青年は無理に話を聞き出そうとは思わなかった。
「あの、ガイさん」
ティグルが黙り込んでいたのは、そんなに長いことではない。だが、なぜか、この場に居合わせていた全員にとって長く感じられていた。
「嘘って、いけないことですよね」
「ウソ……つきたいのか?」
「い、いえ!つきたくないです!」
「なら別にいいんじゃないか?」
「え……」
ティッタもいつしか凱の言葉を聞き入っていた。
「ウソって、いっぱいあるんだよな。つきたくないウソ。つかなければならないウソ。それも、自分の為じゃなくて、誰かのためのね。だったら、俺もいっぱいウソをついてるさ」
「「ガイ……さんも?」」
「ああ、そうさ」
凱は自分の左手につけている獅子篭手を見せてくれた。
「こんなこと言うのもみっともないけど、アルサス防衛戦の時……俺、怖かったんだ」
「怖いんですか?ガイさんでも?」
「ああ、怖いさ。やっぱり、実戦を重ねても、怖い」
ティグルとティッタは、
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