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魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第7話『闇の暗殺集団〜七鎖走る!』
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った数字の正体は、全て殺されずに倒された敵兵なのだ。全員捕虜にすることなど当然できず、首をはねるにも手間がかかる。結局彼らに対して逃がすという選択しかとれない。
つまり、再び相手に剣を持たせる機会を与えてしまったのだ。
これでは、挑んできた敵に敬意を払い、勇敢に戦って散っていった者が報われないではないか。侮辱以外の何物でもない。
自分も相手も守りたいなんていう我儘は戦場では通用しない。
殺さないという事は、当然といっていいほど損害(リスク)を負うのである。一公主であるエレンが、凱を非難するのも当然と言える。
どちらにしても、凱やエレンにしても、「相手に未来を与える」という点は一緒である。

「私は、あの男を見損なうべきなのだろうか」

正直、エレンには凱への評価に悩んでいた。
不殺主義の絶対条件は、まず相手より圧倒的に強いこと。
相手に選択肢を与えることができ、常に自分が優位に立っていないと出来ないからだ。
でなければ自分が殺されて終わりである。
表面的な凱の強さを、歴戦の戦士としても優秀なエレンだからこそ分かる。ただ、強いから殺さないという矛盾だけは分からない。

「ともかく、あいつの事は取りあえず忘れよう。警戒したところで何も始まらない」

そうなのだ。これから戦姫たる自分は、仕える王に対して戦いの正当性を主張しなければならない。
今回において王は、承認を得ていないエレンの独断専行と見なしている。ティグルを助ける為に力を貸してくれた兵や、ライトメリッツに残っている兵、領民達にも危機に見舞われる。
エレンには自国の民を守る義務がある。その為、今一度王都へ向かい、正式に参戦の許可をもらわなければならない。

「リム。ティグルの戦う理由を答えろ」

「第一に領民の安全。テナルディエ公爵の非道な行いにふさわしい処罰を与える事。彼に賠償金を支払わせること。今後の内乱における中立の立場を維持。この4点です」

「そうだ。ティグルは戦う理由をちゃんと主張している」

エレンのその言葉は、リムに不思議な沈黙をもたらした。
無論、危険を顧みず、戦いの渦中に身を置いたライトメリッツの兵達にとって、気持ちは一つである。
だが、本格的にブリューヌの内乱へ自分たちが赴くことは、『ライトメリッツの防衛戦』からの逸脱を意味している。
それは、自分たちの戦いの意義を、あらためて考えるための……沈黙だった。

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