第5話『蘇る魔弾!解き放たれた女神の意志!』
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ロランと比肩するほどの武勇を持つテナルディエという存在が、絶大な信頼と共に、王とその側近たちを後押しした。
世が世なら、「弱者と強者の戦略―ランチェスターの法則」とも呼ぶべき理論を、テナルディエ公爵は自力で見出したのである。しかし、ブリューヌの時代の幼さ故に、それを理解し称賛する者はだれ一人としていなかった。
今、王の勅命を受けて、テナルディエが率いているのは、ナヴァール騎士団のロランとオリビエ、自軍では側近のスティード、せがれのザイアン、少数の工作兵と一定の白兵部隊のみ。西方の守りを放棄した理由は単純で、量より質を求める今回の戦いは、他の騎士団では太刀打ち出来ないからだ。
攻城兵器を一刀の元に粉砕するロランがたまたまナヴァール騎士団に所属していただけであって、そうでなければ、わざわざ西方の守りを開けるようなことはしない。ロランの代役がいれば、西方の守備をカラにする博打に出ることはなかったはずだ。
そして、時は戻る――
「いいか、目標が有効射程に入り次第、すぐに叩け」
ついに双頭竜と討伐軍は戦闘を開始した。
有効射程圏内……今だ!
それは、一斉に大地が噴火したような光景だった!
竜を拘束する為に開発された、テナルディエ軍の開発成果。
特定目標拘束兵器。それは、螺旋状という特殊な矢じりを敷き詰めており、背面には特殊な火薬が装填されている。少なくとも、今流通しているような黒色火薬ではない。もっと特別な火薬だ。
禁忌に近いとされる、無色透明の特殊な火薬。鉄よりも固いとされる竜の鱗を貫くには、それだけの矢の推進力と構造を必要とする。その精製法は、テナルディエのみ知るとされる。
時間のかかる単発式ではない。特殊な歯車の機構と撃鉄による複合設備での連射式となっているものだ。人間が弓を弾いて放つより断然速い。ただ、機械という概念である限り、定期的な点検が必要となる。
「この地上にはない物質」の竜の鱗。単純な素材強度で竜の鱗が相手では、地上界の物質に勝ち目はない。ならば、構造で勝つしかないのだ。
竜の間合いはすなわち、人間にとっての死の世界。人馬の躯が溢れかえる阿鼻叫喚の領域だ。
ブリューヌにおいての標準的な武装は決まって剣か槍を始めとした近接武器である。時折、投石機や石投げを用いた攻撃も行われている。
そもそも、竜にとって、それらの攻撃は細やかな抵抗であり、児戯に等しい。兵士が有効射程に入ったときはもう遅い。何故なら、人にとっての『有効射程』に対し、竜にとっては『確定射程』なのだから。
「ロラン、西方から双頭竜(ガラ・ドヴァ)の動きを捕えられるか?」
壁となる兵がいない分、テナルディエの低い声帯がよく響く。兵量の低下が返って良好な結果を生み出した。
「駄目です!ヤツの動きが速くて近づけません!」
だが、ブリュ
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