第5話『蘇る魔弾!解き放たれた女神の意志!』
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爵は推薦したのか、分からないままだった。
――――しばらく行軍すると、そこには、『二つの竜の頭』が居座っていた。既に、竜が食い散らかした跡もあった――――
「あれが……双頭竜(ガラ・)」
竜という存在の前に固唾を呑むティグル。むしろ、その奇形さがより唾を固くしていた。
以前、狩りの最中に山奥で地竜と遭遇したことがある。驚いたのは竜の存在というより、思わず固唾を呑んでしまうほどの生命力だった。
何より恐ろしいのは、竜の戦闘力は他の生命体を圧倒する。
幼竜期は獣と比較しても脅威としてはあまり変わらないが、成長期や成熟期となると食物連鎖の頂点を象徴するような戦闘力となる。ティグルも、木々をなぎ倒しながら迫ってくる竜の迫力に、何度も死を覚悟したことか分からない。
今、目の前にいるの双頭竜は成長限界と思われる、150チェート(15メートル)級。人間の最大建築物を誇る王宮と比較して遜色ない。そして疑問が一つ浮かぶ。
――なぜ、人間が集まるような都市や町を襲うんだ?竜は人間が放つこの匂いが嫌いだと聞いたけど……――
竜は人間の放つ匂いを嫌い、町や集落には現れる事はないと伝えられてきた。
生物界において、捕食者から身を護る為に、被食者は擬態なり、防衛なり、狩猟なりと一種の攻勢へと出る。
自然と住み分けが行われ、竜と人間の住み分けが行われたらしい。これはある学者の一節にすぎないが。
疑問はやがて回答へとすり替わるように、戦いは唐突に訪れた。
「双頭竜なんてはじめて見たぞ……」
アニエスの渓谷にて相対し、テナルディエ軍率いる討伐部隊と、狩猟対象の双頭竜のにらみ合いはしばらく続いた。
兵士たちの心と、双頭竜の戦意に呼応するかのように、赤茶けたレンガを思わせる砂塵が、戦いの役者達へ叩き付け始める。
異様なほど、突然に吹き付けた突風に打たれながら、テナルディエは双頭竜を見上げていた。そうしている間にも、兵達の間で困惑が広がっていく。
話で聞くのと、実際に見るのとでは、情報認識の度合いが違う。
――数刻前――
テナルディエは、兵力を極力最小化して出立した。
――弱小な兵を連れていけば、竜の腹が膨れるだけ。ならば兵など必要ない――との理屈の元、被害を受けないことを前提として、兵力の低下を無視して進軍した。
事実、ヒトの血肉の味を覚えた竜は、歯ごたえと濃味のクセになる。餌の量に魅了されて活気づく。
兵法や軍略において、兵の損耗率だけを見れば減少するものの、一歩間違えれば貴重な将を容易に失いかねない非現実的な構成群だ。
ただ、テナルディエは『兵力の低下という不利点より、指示伝達速度との向上という利点の方が大きい』と判断され、
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