第5話『蘇る魔弾!解き放たれた女神の意志!』
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父に話した。
あまりの鱗の強度と巨大さ故、証拠を持ち帰るに事が出来なかった。だが、父は戯言に過ぎないと思われる俺の言葉を、あっさりと信じてくれた。
幾重にも罠を張り、地形を利用して、牙を、爪を封じて。
地竜の鱗は固い。この地上の物質とは思えない程固く、矢を全く通さない程に。だが、――鱗の隙間――を狙えば心臓を貫けるはずだ。
その読みは矢と共に的中し、60チェート〜70チェート(6〜7メートル)もある地竜を倒したのだ。
――……ティグル。その年で地竜を倒したとは大したものだ。だが、それだけに……弓を侮蔑するブリューヌがお前を受け入れるには、まだ幼いのかもしれん――
――父上?――
――ブリューヌと時代はお前の力を危険と感じるだろう。先祖から頂いたお前の名前は、ブリューヌ語で『革命』を意味するのだ――
――父上!――
不安の兆しが現実味を帯びてきた時、ティグルは理解するしかなかった。
少年はやがて「僕」から「俺」に変わった。
くすんだ赤い若者が大人へ近づく、13歳の頃の記憶だった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
――すまない。ティグルヴルムド。お前……と弓を外の世界……へ出してやるのに、時間が足り……なかったようだ――
――父上!?―― ――ウルス様!?――
――ティグルヴルムド。その黒き弓……は時代を勝ち……取る力がある。だが、今それを……解放するわけ……にはいか……ないのだ――
――父上!俺はこの『弓』の力を正しきことに使います!希望の為に!――
――ああ、もちろん私……もそう信じている。ティグルヴルムド。お前の……その正しい心を持ち続ける事。民を守る……優しい心を持ち続ける事。ブリューヌ……の人々が、世界が……そう願う事を――
――父上!?――
――あとは……頼んだぞ。バ……ートランさらばだ。ティグルヴルムド……――
――父上……父上ぇぇぇぇぇ!!――
ティグルに全てを託したかのように、ウルスは息を引き取った。愛する父の顔は何処か満足げに微笑んでいるように見えた。
父と呼ぶ、くすんだ赤い若者の声は、空虚な響きとなって木霊する。
(――いつか、世界に危機が訪れた時、ティグルはその黒き弓で、世界に平和をもたらしてくれるであろう。――)
(――同時に、不安もある。――)
(――そう遠くない時代の中で、ティグルヴルムドは世界の革命を賭した戦乱に、巻き込まれてしまうのではないか?――)
(――今の時代を生きる若人達よ。――)
(――ティグルは、私の、いや、全ての人々の光明の矢であることを、忘れないでほしい。――)
――……父上――
父の墓前で
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