Track 1 両手を広げて
活動日誌1 スタート・ダッシュ! 1
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少しアレだけど、ねぇ?
でも、私が求めていた望みは叶えられた気がする。
だから――
ありがとう、お姉ちゃん。大好きだよ――これからも、よろしくね?
私は心の中で感謝を述べると、お姉ちゃんに向かって言葉の代わりに笑顔を見せる。
もちろん、何のことだか理解できていないお姉ちゃんは疑問の表情を浮かべていたけれど、当然教えてやるもんか!
恥ずかしいからね? お姉ちゃんには内緒。
と・は・言・え? ドキドキした私の気持ちは、お返しさせてもらうんだから!
「……私が食べたい物はねー?」
「あっ、見つかった? なになに?」
私はお姉ちゃんに笑顔を向けたまま食べたい物を告げようとする。
お姉ちゃんは私が食べたい物を教えてくれると思い、疑問の表情から嬉々とした表情に変えて聞いてきたのだった。
だから、私は悪戯が成功した子供のような満面の笑みを浮かべて――直ぐにお姉ちゃんに背を向けて、クスッと小さく吹き出し笑いをすると――
「穂むらのお饅頭!」
声高らかに伝えるのだった。
♪♪♪
「……えぇーーーーーー?」
私の背後から、物凄く悲愴感の伝わる声が聞こえる。
まぁ、声の持ち主は百も承知ですけどね? いくらなんでも、そこまで悲愴感出さなくても、ねぇ? 私は恐る恐る、背後の惨状を確認する為に振り返った。
いや、お姉ちゃん? 何もそこまで悲しまなくても良いんじゃない? お母さんに言いつけるよ?
お姉ちゃんは、その場に両膝をつき肩を落とした状態で――まるで、捨てられた子犬のような表情で上目遣いをしながら見上げていた。
やめてよ、お姉ちゃん? なんか私の方が悪いみたいじゃん!
「……なんで、穂むまん食べなきゃいけないのさー? お姉ちゃんが奢ってあげるって言ってるんだよ? ほら、ケーキとかクレープとかあるでしょ? と言うか、あんこヤダー! チョコとか食べたいんだよー!」
いや、私の食べたい物でしょ? なんで、お姉ちゃんの食べたい物になってんのさ?
しかも、あんこヤダって――本当に、お母さんに言いつけるよ? なんてね。
ちなみに、私の言った『穂むらのお饅頭』通称 穂むまん。
いや、穂むまんってさ? お姉ちゃんが勝手に言っているだけな気もするんだけど。
穂むらとは、私達――高坂家の両親が営む和菓子屋のこと。
つまりは、お姉ちゃんの願望と言う名の企みを阻止して――Uターンをして実家に帰って、自分の家のお饅頭を食べる。
これが私のドキドキへの仕返しなのだった。
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