第4話『命運尽きず!絶望の淵に放たれた一矢!』
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レの下で喘ぎながら、せいぜい奴の名を呼ぶことだな!」
ティッタの切ない思いをあざ笑うかのように、ザイアンは欲望の限りをぶちまけた!
おぞましいテナルディエ指揮官の魔の手が少女に迫ろうとする半瞬前――
――一瞬、風が唸った――
そして、風が唸ったと同時に、生々しい貫通音が発生する。
一本の矢が、ザイアンの手に突き刺さっていた。痛覚が脊髄に到達する前に、ザイアンの背筋には悪寒が走った。
(馬鹿な!?一体どこから!?まさかこの小さな柵の隙間から俺の手を狙って!?)
もし、それが本当だとしたら――まさに、『針の穴に糸を通すような精密射撃』だ。
戸惑いの後に手を貫通された激痛が、ザイアンの認識を現実に引き戻す。
おとなしく狩りの対象にされるつもりはティッタにない。動揺しているザイアンを振り切って、矢羽の後方を見やると、そこには……
――ティッタ!――
それは、幻聴かもしれなかった。むしろ、幻聴と思えれば、いくらか気が楽なように思えた。
神様の気まぐれかもしれない。記憶の片隅でご主人様に合わせてくれたのかもしれない。
「ティッタ!!」
幻聴……じゃない!
確かに聞こえる!自分の名を呼ぶこの人を、あたしは知っている!忘れるわけがない!
「飛ぶんだ!ティッタ!!」
矢の正体は、少女が待ち望んでいた、くすんだ赤い髪の若者のものだった。
ティッタは何の迷いを見せず、自身を捕まえようとするザイアンの手を振り切り、柵の向こう側へ身を躍らせた!
――信じてた……必ず帰ってくるって……ティグル様……帰ってくると……信じてました――
涙声まじりで、ティッタは何度もつぶやいた。胸にこみ上げてくる熱い想いが、それ以上の言葉を失わせていた。
「心配かけたな……けど、もう大丈夫だ」
希望の矢によって繋ぎ止められた。「必ず帰ってくる」という約束も。絆の強さも。何もかも。
まだ、アルサスの命運は尽きてはいない。そしてティッタは確かに学んだ事がある。
戦うことだけが勇気ではない。だが、戦わざることも勇気とは言えない。待ち続ける事と信じ続ける事もまた、一つの勇気の形だという事を。
ここから始まるんだ。若人達の本当の戦いが――
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