第4話『命運尽きず!絶望の淵に放たれた一矢!』
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よく言えたものだ。その勇気だけは誉めてやろう……だが!」
「その暴言がどれほどの重罪なのか、思い知るがいい!」
(どうすれば……どうすればいい?)
うろたえるティッタは、ふいに自分の腰元を見やった。そこには、あの青年と同じ深緑の短剣が帯刀してあった。万が一の為に持たせていた、IDアーマー装備の2刀のウィルナイフの片割れを、護身用としてティッタに持たせていた。
「ガイさん……あたしに勇気を」
ティグルの引き出しにある大ぶりなナイフよりも大きいものの、ザイアンの長剣に比べれば、刀身ははるかに短い。
使用者の意志の強さによって、自在に切れ味が変化する。勇気ある者が振るえば、竜の鱗さえ斬り裂ける伝説の剣となり、勇気なきものが振るえば、肉を着る事叶わない末刀となる。
だが、凱は確信していた。――ティッタの勇気が本物なら、ウィルナイフは必ず応えてくれるはずだ――と
胸元を斬り裂こうとしたザイアンの太刀筋が、振り下ろされる。対してティッタの姿勢は、身を固めたような『正眼の構え』に見えなくもない。
刹那、長剣と短剣が交錯する。しかし、『明らかに鉄製でできているはずのザイアンの剣が、木製を表すかのように』斬り裂かれていく。
僅かな火花を散らしながら、凶刃からティッタを護ったのだ。
「な……何なんだ!?」
ザイアンも、ティッタも、今、この目の前で起こった超常現象にわが目を疑うばかりだった。
(これなら!)
ウィルナイフの斬れ味に助けられたものの、初めての実戦で本能的な恐怖は隠せない。
驚き戸惑っていたザイアンは、そこに付け入った。
「どうした?刃が振るえているぞ?」
どんなに優れた刃物を持とうとも、所詮は一介の侍女と踏んだザイアンは、ウィルナイフの切断力を恐れることなく、二の太刀を振るった。
刃の切れ味が協力なら、柄を狙ってしまえばいい。
勇気を持ちながら、剣術を持たないティッタは、抵抗空しくザイアンにウィルナイフの柄をはじかれ、切り返しで胸元の服のみを斬り裂かれる。羞恥と悔しさから顔を赤くし、獅子に追い詰められた兎のように、とうとうバルコニーへ追い詰められる。
退路を亡くしたティッタは、乱暴に押し倒されて、必死でこらえるように両目をぎゅっと閉じた。
「ティグル様!」
泣きそうになるのをこらえ、必死に大好きな主様の名を呼び続けるティッタ。
「なんだ?侍女の分際で、ご主人様に想いを寄せていたのか?」
人物らしき単語を聞きとがめ、ザイアンの歪んだ苛虐心は妄想で膨れ上がる。あの黄金の騎士の弱点とする前に、一つ楽しませてもらう。
「ティグル様は……ティグル様は必ず帰ってくる!!」
勇気が恐怖へと徐々に変わる瞬間を、ティッタは味合わされていた。
「こいつはいい!オ
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