暁 〜小説投稿サイト〜
魔弾の王と戦姫〜獅子と黒竜の輪廻曲〜
第4話『命運尽きず!絶望の淵に放たれた一矢!』
[3/9]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
い。
彼らは、始めから略奪をするつもりだ。雨後の茸の集落となど、戦争しようとする気は毛頭ない。
家屋を踏み倒し、黒煙をまき散らし、公共建物に、交通機関に、容赦のない攻撃を加えている。
金品を奪い、酒樽を奪い、何もかも奪い去る。全ては順調に行く……はずだった。
数で圧倒的に勝り、兵の練度も桁違いに高いテナルディエ兵の歩兵部隊のもとに、イークイップ状態の獅子王凱が舞い降りる。
そして瞬時に目標を固定すると、片手に携えた深緑剣のウィルナイフから光が迸った。
即ち、抜刀――
捕捉された歩兵部隊の一人は、一瞬にして戦闘力を奪われる。
鉄製であるはずの鍛えられた剣が、鎧が、盾が、まるで紙切れのように切断される。奪われたのは敵の生命ではない。戦意だった。
乱戦状態のこの状況下で、あやまたず的確に敵の部位を打ちのめした凱の戦闘力は、敵兵における戦の常識を遥かに超えていたのだ。
その凄まじい戦闘力に、敵のみならず、この戦いを遠くから見守っているティッタや、神殿の窓から覗き込んでいる人々は茫然して動きを止めた。
今、この一人の男によって、略奪と殺戮は妨害を余儀なくされていた。
だが、そうは言っても、物量と兵力は圧倒的にテナルディエ兵が断然上で、そして丘の向こうには、『2匹の竜』が控えている。凱のサイバースコープは、セレスタの郊外にいる、竜を跨る敵の指揮官を認識していたのだ。このままでは、民の心は恐怖に押し切られてしまう。
街中で赤熱銃弾(ブロウクンマグナム)空間障壁(プロテクトシェード)を展開すれば、余波だけで被害が拡大する。物的被害を最小限に、敵兵の局所破壊を狙うなら、ウィルナイフか近接格闘しかない。
口を開く体力さえも無駄にできない。一刻、一分、一秒でも時間を稼ぐ。バートランが必ず領主様を連れて戻ってくると信じて。
獅子王凱は有能であっても万能ではない。ひたすら戦い、今にも挫けそうなアルサスの民の心を鼓舞し、ティッタの心を勇気づけることしかできない。

「どうした!?どんどんかかって来い!!」

俺は何かに成りたい。何かに成らなかければならない。
心がとても渇いている。何かを助けたくて。救いたくて。代わりになりたくて。

(俺を信じてくれているアルサスの人たちの為にも、俺は勇者でなければいけない。たとえどんなに小さな煌灯(きぼう)でも、それは決して消えちゃいけないんだ!)

アルサスの人々に燻ぶっていた希望の火が、徐々に灯っていく。それはさながら、一本一本、心のロウソクが灯っていくように。
凱の雄々しき戦いに、皆は勇気を与えられている。

「ガウにーちゃ!」

まだ発音の乏しい小さな子供が――

「ガイさん!頑張っておくれ!!」

妙齢の夫人たちが――

「ガイ殿!シシオウ=ガイ殿!」

高齢に差し
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ